アース線でノイズは減る?つなぐと増える場合とグランドループ対策の順番
アース線でノイズが減るのは、機器同士の基準の電位がそろう場合です。つないでかえってノイズが増える例、音の種類からアースが原因かを見分ける表、費用のかからない順の対策と、やってはいけない処置をまとめます。
アース線をつなげばノイズが消える、とは限りません。
アース線で減るのは、機器同士の基準の電位がずれて出る「ブーン」というハムノイズです。
一方で、アースの経路が2本以上できるとグランドループになり、つないだことでかえってノイズが増えることもあります。
この記事では、ノイズの音からアースが原因かを見分ける方法と、お金のかからない順の対策を整理します。
アース線でノイズが減る場合・増える場合
アース(接地)には、目的の違う2種類があります。
- 安全用のアース : 洗濯機や電子レンジの緑の線、3Pプラグの丸いピン。漏電したときに電気を地面へ逃がし、感電を防ぐためのものです
- オーディオのアース(信号のグラウンド) : 機器同士の基準の電位をそろえ、信号にノイズが乗らないようにするためのものです
ノイズ対策で効くのは、主に後者です。
壁のアース端子に何でもつなげば静かになる、という仕組みではありません。
| 状況 | アース線の効果 | 理由 |
|---|---|---|
| レコードプレーヤーのアース線を、アンプのGND(アース)端子につなぐ | 減る | プレーヤーとアンプの基準の電位がそろい、ハムや静電気のノイズが逃げる |
| 機器を別々のコンセントにつないでいて、電位に差がある | 電源をそろえると減る | アースの電位差そのものが小さくなる |
| すでに信号ケーブルでつながっている機器同士を、さらにアース線でつなぐ・壁のアースにもつなぐ | 増えることがある | アースの経路が2本以上になり、ループができる |
| 集合住宅で、壁のアース端子に機器のアースをつなぐ | 変わらない、または増えることがある | 建物のアースは他の家電も共用しており、そのノイズが流れ込むことがある |
| 「サー」という一定の音が出ている | ほぼ変わらない | 原因はアースではなく、マイクの感度やゲインの上げすぎであることが多い |
アース線は「つなぐ」「外す」の両方を試して、ノイズの変化で判断するのが基本です。
ただし、外してよいのはオーディオ用のアース線だけです。
安全用のアースを外す処置は危険なので、後の「やってはいけないアースの処置」で説明します。
ノイズの音でアースが原因かを見分ける
対策を買う前に、まずノイズの音を聞き分けます。
アースが原因のノイズには、はっきりした特徴があります。
| 聞こえ方 | 主な原因 | 最初に試すこと |
|---|---|---|
| 「ブーン」という低い唸り | 電源の周波数(東日本50Hz・西日本60Hz)によるハムノイズ。グランドループの典型 | 機器をすべて同じ電源タップにまとめる |
| 「ジー」「ジジジ」という少し高い唸り | ハムの倍音や、電源ケーブルからの誘導 | 信号ケーブルを電源ケーブルから離す |
| 「サー」という一定の音 | マイクやアンプの自己雑音、ゲインの上げすぎ | ゲインを下げて、マイクとの距離を近づける |
| 「パチパチ」「ガリッ」という音 | 静電気、端子の接触不良 | 端子を挿し直す。レコードプレーヤーならアース線を確認 |
| マウスを動かす・画面を変えると音が変わる | PCのUSBや電源を経由して入るノイズ | ノートPCなら充電器を外して変化を見る |
「ブーン」「ジー」の2つは、アースの扱いで直る可能性が高い音です。
「サー」はアースを触っても変わらないことが多く、機材の設定から見直します。
グランドループの仕組み
グランドループは、次の流れで起きます。
- 複数の機器(アンプ・オーディオインターフェース・PC・ミキサーなど)を、それぞれ異なるコンセントや電源タップにつなぐ
- コンセントごとに、アースの電位(基準となる電圧)にわずかな差が出る
- 機器同士を信号ケーブル(RCA・XLR・USBなど)でつなぐと、その差を埋めるようにケーブルのシールドへ電流が流れる
- この電流が音声信号に混ざり、ハムノイズになる
つまり、アースが2つ以上の経路でつながっている状態がループを作ります。
1台の機器だけでは起きず、複数の機器をつないだときに初めて問題になるのが特徴です。
自分の環境がグランドループかを見分ける手順
原因を特定せずに対策すると、見当違いの買い物になりがちです。
次の順で切り分けます。
- 信号ケーブルを1本ずつ抜く : ノイズが消えるケーブルがあれば、その経路が原因の可能性が高いです
- 機器をすべて同じ電源タップ・同じコンセントにまとめる : これで軽くなれば、電源が分かれていることによるグランドループです
- 機器の電源を1台ずつ落とす : どの機器を止めるとノイズが変わるかで、発生源を絞れます
- ケーブルの種類を確認する : アンバランス接続(RCAなど)は影響を受けやすく、バランス接続(XLR・TRS)は受けにくい構造です
アースのノイズ対策は費用のかからない順に
切り分けができたら、お金のかからない対策から試します。
| 順 | 対策 | 費用 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 1 | 電源タップ・コンセントを1か所にまとめる | なし | 機器の電源が別々のコンセントに分かれている |
| 2 | 信号ケーブルを電源ケーブルから離す・交差させる | なし | 「ジー」という音で、配線が束ねてある |
| 3 | バランス接続のケーブルに替える | ケーブル代 | 機器がXLR・TRSに対応している |
| 4 | グラウンドループアイソレーターを入れる | 製品代 | 電源をどうしても分けられない |
| 5 | 建物のアースを点検してもらう | 工事費 | 1〜4で変わらず、コンセントのアース自体が疑わしい |
電源タップ・コンセントを統一する(最も手軽)
すべての機器を同じ電源タップにまとめると、アースの電位差そのものが小さくなります。
工具も追加費用も要らないので、最初に試します。
信号ケーブルと電源ケーブルを離す
電源ケーブルと信号ケーブルを並べて束ねると、電源のノイズが信号側に移りやすくなります。
離せない場所では、平行に沿わせず直角に交差させます。
バランス接続に切り替える
アンバランス接続からバランス接続(XLR・TRS)に替えると、ノイズの混入経路そのものが減ります。
PA現場やオーディオインターフェースを使う環境では、できる限りバランス接続を選ぶのが基本です。
グラウンドループアイソレーターを使う
配線が離れている、業務用の電源が別系統になっているなど、電源を分けざるを得ない環境では、グラウンドループアイソレーターを信号経路に入れます。
アースの経路を信号ケーブルの途中で断ち切るので、ループができなくなります。
オーディオのRCA用、USB用、映像用など、扱う信号ごとに製品が分かれているため、つなぐ端子に合ったものを選びます。
アースの状態そのものを点検してもらう
コンセントのアース工事が不十分、またはアースが取られていない場合、上の対策だけでは直らないことがあります。
機器のアース線を、すでにあるコンセントのアース端子につなぐのは利用者でもできます。
一方で、壁の中のアース線の増設や配線の変更は、電気工事士の資格が必要な作業です。
疑わしい場合は、電気工事店か管理会社に相談してください。
やってはいけないアースの処置
アースを外すとノイズが消えることがあります。
ただし、安全用のアースを外したまま使うのは危険です。
- 3Pプラグのアースピンを折る・浮かせる : ノイズは消えても、漏電したときの感電防止がなくなります。オーディオ用のアース線で調整し、安全用のアースは残します
- ガス管にアース線をつなぐ : 引火のおそれがあり、アースとしても使えません
- 水道管にアース線をつなぐ : 途中が樹脂の配管になっている建物では、地面とつながらずアースの役目を果たしません
- 集合住宅で、アース線を勝手にベランダの手すりや地面へ引く : 共用部分の改変になるうえ、安全なアースになる保証がありません
アースの工事や電気設備の扱いは、感電や火災に関わります。
自己判断で分解・改造せず、電気工事士などの専門家に確認してください。
レコードプレーヤー・PA現場・電子工作の注意点
家庭のオーディオとは別に、次の場面にも注意点があります。
- レコードプレーヤー : プレーヤーのアース線をアンプのGND端子につなぎます。外れていると「ブーン」というハムが出やすく、アナログ再生でアース線がもっとも効く場面です
- PA現場 : 会場の電源が複数の系統に分かれていると、ミキサー・アンプ・照明がそれぞれ別のアースにつながり、グランドループが起きやすくなります。本番前のサウンドチェックで必ずノイズを確認します
- 電子工作・自作オーディオ機器 : 回路のグラウンド(GND)の配線を1点に集める「スターグラウンド」を意識すると、ループを防ぎやすくなります
配信・宅録環境での見分け方と対策
マイク・オーディオインターフェース・PCの組み合わせでは、吸音パネルや機材の対策をしても消えない「ジー」という唸りが、グランドループ由来であることがよくあります。
配信環境では、次の手順で切り分けます。
- マイクケーブルを抜く : ノイズが消えれば、ケーブルや配線経路が原因の可能性が高いです
- 機器をすべて同じ電源タップにつなぎ直す : これで軽くなれば、電源の分離が原因のグランドループです
- ノートPCの充電器を外す : 外して静かになるなら、充電器とUSBを経由したループです。USB用のアイソレーターか、オーディオインターフェースとPCを同じタップにまとめる対策が効きます
- PCの電源を落としてもノイズが残るか確認する : 残る場合は、PC本体ではなく配線・電源側の問題です
PC本体のファン音や振動によるノイズとの違いは、次の記事で解説しています。
配信のマイクノイズはPC本体が原因?ファン音・反響・外音の切り分け
配信用途では、バランス接続に対応したマイクケーブルへの交換が特に効果的です。

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防音室のケーブル配線術|配信機材が増えても散らからない整理と電源の考え方
よくある質問
アース端子のないコンセントでもノイズ対策はできる?
できます。
グランドループの多くは、壁のアースではなく機器同士のつなぎ方で起きています。
電源タップの統一、バランス接続、アイソレーターは、アース端子がなくても試せます。
アースを外したらノイズが消えた。そのままでいい?
外したのがオーディオ用のアース線なら、そのままで構いません。
3Pプラグのアースピンを浮かせて消えた場合は、安全用のアースを失った状態なので、元に戻してアイソレーターなど別の方法で対策します。
グラウンドループアイソレーターで音質は落ちる?
トランス式の製品は、機種によって低音や高音の出方が変わることがあります。
購入前に、仕様に書かれた周波数特性が自分の用途の帯域をカバーしているかを確認します。
まずは電源タップの統一など、無料の対策で直るかを先に確かめるのがおすすめです。
まとめ
アース線でノイズが減るのは、機器同士の基準の電位がそろう場合です。
アースの経路が2本以上できるとグランドループになり、つないでかえって増えることもあります。
「ブーン」「ジー」という音ならアースが原因の可能性が高く、電源タップの統一→配線の分離→バランス接続→アイソレーター→建物のアース点検の順に試します。
安全用のアースは外さず、壁の中の工事は電気工事士に任せてください。