【調査報告】首都圏における高性能防音賃貸市場の定量的分析(2025-2026)
「防音賃貸はなぜ高いのか?」首都圏のミュージション1Kの下限家賃を一般賃貸と比べ、エリア別の上乗せ率(+17%〜+100%)を公開。待機が続く背景と、入居までの動き方、23区外へ広げる考え方まで整理します。
「ミュージション」や「ラシクラス」といった有名な防音賃貸ブランド。
しかし、いざ探してみると「空室なし(待機中)」ばかり。
本記事では、防音賃貸の家賃が一般の賃貸よりどれだけ高いのか、なぜ空きが出にくいのかを、公表データと当サイトの調査で整理します。
より戦略的な部屋探しに役立ててください。
結論:防音賃貸は「探す」より「待機登録して待つ」もの
首都圏の防音賃貸の最大手「ミュージション」を運営する株式会社リブランは、入居率とウェイティング(空き待ち)の登録者数を公表しています。
- 2024年度の平均入居率は99.3%
- 空き待ちの登録者は12,000名超(2026年1月時点の発表)
一般の賃貸の空室率と単純には比べられませんが、需要が供給を大きく上回っていることは確かです。
棟数・戸数の公表値は、発表の時期で異なります(2025年10月時点で41棟・828戸、2026年2月時点で43棟・856戸、世田谷赤堤の完成後は累計44棟・916戸)。
最新の数字は、公式発表で確認してください。
防音賃貸の「プレミアム」家賃:エリア別の上乗せ率
ミュージション1Kの掲載家賃の下限と、同じエリアの一般賃貸1Kの相場を比べました。
| エリア | 一般賃貸1Kの相場 | ミュージション1Kの下限 | 上乗せ率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 渋谷区(下北沢) | 11.2万円 | 16.3万円 | +45% | 2025年新築、駅近 |
| 新宿区(早稲田) | 10.9万円 | 12.7万円 | +17% | 音大が近い |
| 世田谷区(赤堤) | 8.5万円 | 13.2万円 | +55% | 2026年新築 |
| 中野区(野方) | 7.8万円 | 12.5万円 | +60% | |
| 板橋区(西台) | 6.3万円 | 12.6万円 | +100% | 絶対額は低いが上乗せ率は大きい |
| 川越市 | 5.6万円 | 9.1万円 | +63% | 築年が古い物件 |
出典:当サイトの調査(2026年6月24日時点)。ミュージション公式の物件一覧の掲載家賃(1Kの下限)と、SUUMO・ヤスクスムなどの2026年の一般賃貸1K相場を比較。
注意点は次のとおりです。
- 比較は掲載家賃の下限で、実際の入居価格は上限寄りになりやすい
- 一般相場はエリア全体の平均で、築年や広さが同条件とは限らない
- 上乗せ率はD-70前後の専用ブランド物件の数字で、「防音室付き新築」などを含めた広い定義とは異なる
広い定義で見ると、数字は小さくなります。
MUFG不動産レポート(2026年1月)の防音マンションのアンケートでは、新築の防音物件と通常物件の賃料差は「+5%未満〜+30%未満」が最も多い回答でした。
つまり、専用ブランドの防音賃貸は、一般的な「防音仕様」の物件よりも上乗せが大きい傾向があります。
エリア別の家賃の目安(ミュージション1Kの下限)
エリアを広げると、家賃は下がります。
| エリア | 棟数(調査時) | 1Kの下限の幅 | 中央値 | 都心までの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 都心・人気エリア(下北沢・早稲田・世田谷など) | 7 | 12.7〜16.3万円 | 13.2万円 | 15〜25分 |
| 23区の北部・西部(野方・西台・江古田など) | 8 | 7.9〜10.8万円 | 9.8万円 | 25〜40分 |
| 神奈川・千葉(川崎・登戸・千葉駅前など) | 7 | 9.2〜10.5万円 | 9.8万円 | 20〜45分 |
| 埼玉・多摩西部(川越・小平・志木・朝霞) | 4 | 6.7〜8.5万円 | 8.0万円 | 40〜60分 |
出典:当サイトの調査(2026年6月24日時点、ミュージション公式の1Kを含む26棟)。
都心と埼玉・多摩西部の中央値には、約5.2万円の差があります。
ただし、郊外の物件もほぼ待機状態なので、「安い物件を選べるか」より「そもそも入れるか」が最初の壁です。
なぜ上乗せされるのか
単に「音が漏れない」だけでなく、24時間楽器演奏可能という「時間の自由」が価格に含まれているためです。
貸しスタジオを日常的に使っている場合は、その利用料と通う手間が、比較の基準になります。
演奏の時間に制約のある一般の賃貸では得られないため、プロやプロ志向の方には合理的な選択肢になりえます。
一方で、必要なD値は楽器で変わります。
楽器別の目安は、遮音性能の基準「D値」とは?楽器・用途別の目安を徹底解説の賃貸物件の項で確認できます。
主な防音賃貸ブランド
防音賃貸の専門ブランドは、いくつかあります。
| ブランド | 運営 | 特徴 |
|---|---|---|
| ミュージション(MUSISION) | 株式会社リブラン | 24時間楽器演奏可。首都圏中心に累計40棟超。D値を開示する物件が多い |
| ラシクラス | 株式会社らしく | 周辺相場の約130%の家賃設定で満室になった事例が紹介されている |
| 音楽マンション | 越野建設 | 東京を中心に、埼玉・神奈川・千葉へエリアを拡大 |
「リブラン」は、ミュージションの運営会社です。別のブランドとして数えないようにしてください。
一般の不動産ポータルは、「防音」での絞り込みがしにくいため、ブランドの公式サイトでの直接検索・会員登録が基本になります。
専門ブランド以外にも、地域の不動産会社が「楽器相談可」「防音仕様」と表記する物件があります。
仙台・大阪など各エリアの地域密着型の物件もあわせて確認すると、選択肢が広がります。
エリア別の相場は、防音賃貸・防音マンション完全ガイドも参照してください。
ミュージションを詳しく知りたい方は、ミュージション(MUSISION)完全攻略ガイドをご覧ください。
空きが出にくい市場で、入居までに取る行動
防音賃貸は、「いい部屋が出たら内見して決める」という探し方が通用しにくい市場です。
申込から入居までの流れを事前に把握し、先回りして動くことが重要です。
- 公式サイト・会員サイトへの登録を最優先する : 一般のポータルに載る前に、会員の中で次の入居者が決まることがあります。候補ブランドで、先に登録と問い合わせを済ませる
- 審査書類を先に準備する : 空室が出ても短期間で埋まるため、在職証明や収入証明などを事前にそろえておく
- 閑散期を狙わない : 一般の賃貸と違い、通年で動きがあるので、アンテナを張り続ける
- エリアを広げる : 都心にこだわらず、23区の北部・西部や近郊に目線を広げる
2026年以降、需要はどこから増えるか
防音賃貸の需要を牽引してきたのは、ピアノや弦楽器などの演奏者でした。
近年は、楽器を演奏しない配信者・VTuber、リモートワーカーからの需要も増えています。
- 配信者・VTuber : 深夜のボイスチャットや歌枠配信での音漏れを避けたい
- リモートワーカー : Web会議の声漏れ防止、生活音と仕事音の分離をしたい
「深夜でも声を出せる」という訴求が、演奏者以外への入口になっていると考えられます。
今後は、D-30〜D-40程度の「テレワーク・配信向け」の防音賃貸への需要も伸びる可能性があります。
23区外・首都圏近郊への広がり
都心の空室が逼迫していることから、家賃を抑えつつ防音性能を確保したい層が、23区外や近郊へ目を向けています。
23区北部・西部の家賃の中央値(9.8万円)は、都心(13.2万円)より約3.4万円低い水準です。
リモートワーク中心で通勤頻度が低い場合は、近郊への居住地シフトも現実的です。
ただし、通勤時間と、築年、空室待ちの長さとのトレードオフがあります。
次のステップ
目的に合わせて、次の記事に進んでください。
- 防音賃貸のエリア別相場と選び方 : 防音賃貸・防音マンション完全ガイド
- 楽器可物件の探し方 : 楽器可賃貸の正しい探し方
- 契約前の確認事項 : 賃貸に防音室を置く前に確認すべき契約書チェックリスト
- オーナー向けの防音リノベ : 【A4一枚】防音リノベROI収益シミュレーション
- 防音市場全体の規模 : 日本の防音市場規模の統計データ