電子ピアノの打鍵音対策|ヘッドホンでも下の階に響く振動とペダル音の止め方
電子ピアノの打鍵音対策は、ヘッドホンでは消えない「コトコト」という振動を、脚とペダルから床へ伝えないことが中心です。防音マットが必要かどうか、ペダル音の原因、効く順の対策と費用を表で整理し、判例から分かる夜の練習の線引きも解説します。
電子ピアノの打鍵音対策は、ヘッドホンでは消えない「コトコト」という音と振動を、本体の脚とペダルから床へ伝えないことが中心です。
ヘッドホンで消せるのは、スピーカーから出る電子音だけです。
鍵盤を押す音と、ペダルを踏む衝撃は、楽器の下の床から下の階へ届きます。
この記事では、防音マットが必要かどうか、ペダル音の原因、効く順の対策と費用を整理します。
「そこまで気にしていたら練習できない」という本音に対しては、判例から分かる線引きで答えます。
ヘッドホンをしても、打鍵音と振動は残る
ローランドは、電子ピアノの購入者向けの公式ブログで、打鍵音を「コトコト」という音と説明しています。
あわせて、打鍵音は電子ピアノ・アップライト・グランドのどれでも、鍵盤を弾けば必ず出る音だと書いています。
電子ピアノは音量を下げられるぶん、かえって打鍵音が目立ちやすい、という指摘もあります。
電子ピアノから出る音は、次の3つに分けられます。
| 音 | 伝わり方 | ヘッドホンで消えるか | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 電子音(スピーカー) | 空気を通って広がる | 消える | 音量、ヘッドホン |
| 打鍵音(コトコト) | 鍵盤の底の衝撃が、本体と脚から床へ伝わる | 消えない | 本体の下の防振、弾き方 |
| ペダル音(トン、カタカタ) | 踏む衝撃が、ペダルの台から床へ直接伝わる | 消えない | ペダルの下の防振、ペダルの調整、踏み方 |
下の階に届いているのは、主に下の2つです。
どちらも空気ではなく、床の構造を伝わる固体伝搬音です。
キーボード・電子ピアノ・電子ドラム・台パンに共通する仕組みと、対策を置く4か所は、叩く音・押す音が下の階に響くのはなぜ?ヘッドホンでも消えない振動の止め方で整理しています。
電子ピアノの打鍵音が下の階に響く仕組み
鍵盤を押すと、鍵盤は底に当たって止まります。
この底に当たる衝撃が、本体の骨組みから脚へ、脚から床へと伝わります。
床に入った振動は、下の階の天井から音として聞こえます。
仕組みは、パソコンのキーボードの底打ちと同じです。
キーボードでは「ストロークの長さより、底打ちするかどうかと、底で何が受け止めるか」が振動の大きさを決めます。
詳しくはキーボードの打鍵音対策|下の階に響く振動を止める順番と静音化で解説しています。
電子ピアノのほうが厄介なのは、次の2点です。
- 強く弾く曲ほど、底に当たる衝撃が大きい : フォルテで和音を鳴らすと、鍵盤が一度に何本も底に当たります
- ペダルは足で踏む : 手で押す鍵盤より力が大きく、ペダルの台は床に直接触れています。下の階には「トン」という低い音で届きやすいです
自分の音がどこまで届いているかを確かめる
対策を買う前に、どの音がどこまで届いているかを確かめます。
- 家族に聞いてもらう : ヘッドホンをして、いつもの強さで1曲弾きます。別の部屋や、戸建てなら1階で聞いてもらいます
- スマホを床に置いて録音する : 楽器から離れた床にスマホを置いて録ります。「コトコト」と「トン」が分かれて聞こえれば、どちらが大きいかが分かります
- ペダルだけ、鍵盤だけで分けて弾く : ペダルを使わない曲と、ペダルを多く使う曲で比べると、原因が絞れます
録音は、対策の前後を比べるのにも使えます。
あくまで自分で確かめるための目安で、騒音計での測定の代わりにはなりません。
電子ピアノの打鍵音対策:効く順と費用
対策は、お金がかからず、発生源に近いものから試します。
| 順番 | 対策 | 費用の目安 | 効く音 | 限界 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 夜はタッチとペダルを軽くする | 0円 | 打鍵音・ペダル音 | 表現の練習にはならない |
| 2 | ペダルの調整と、ペダルの下の防振 | 0円〜数千円 | ペダル音 | 本体の不具合が原因なら直らない |
| 3 | 本体の下に、電子ピアノ用の防振マット | 数千円〜 | 打鍵音・ペダル音 | 薄いカーペット1枚では足りない |
| 4 | 置き場所を変える(隣の家と接する壁・寝室の上を避ける) | 0円 | すべて | 部屋の間取りで選べないことがある |
| 5 | 床の重ね敷き(防振マットの上に板など) | 1万円前後〜 | すべて | 重く、賃貸では原状回復に注意 |
| 6 | 防音室・防振ユニット | 数十万円〜 | すべて | 費用と設置の条件 |
費用は、一般的な市販品の価格帯の目安です。
いちばん効きやすいのは、2と3の組み合わせです。
打鍵音は本体の脚から、ペダル音はペダルの台から、それぞれ別の場所で床に入るためです。
電子ピアノに防音マットは必要か
集合住宅や、フローリングの部屋に置くなら、必要と考えてよいです。
ローランドも、賃貸・集合住宅やフローリングに置く場合に、電子ピアノ用のマットを敷くことを勧めています。
マットを選ぶときは、次の3点を見ます。
- 重さと密度 : 薄いカーペットや、軽いウレタンのマットでは、振動はほとんど止まりません。ゴムや樹脂の、重さのあるものを選びます
- 広さ : 本体の脚だけでなく、ペダルと椅子の下まで入る広さにします。ペダルがマットの外に出ていると、ペダル音はそのまま床に入ります
- 厚さ : 厚いほど振動は止まりやすいですが、ペダルの高さと、鍵盤と椅子の高さの関係が変わります。椅子の高さも合わせて調整します
マットは、軽く硬い打鍵の衝撃には効きやすい対策です。
一方で、ペダルを強く踏み込む低い「トン」には、マット1枚では足りないことがあります。
床を伝わる振動が、マットだけでは止まりにくい理由は、階下から足音の苦情が来たら?ジョイントマットで防げない理由と正しい対策で解説しています。
電子ピアノのペダル音の対策
ペダル音は、打鍵音とは別に対策します。
原因は、大きく分けて2つです。
- 踏み込む衝撃 : ペダルを底まで強く踏み切ると、その衝撃がペダルの台から床に入ります
- ペダルの台のガタつき : 台が床から浮いていたり、固定がゆるんでいたりすると、踏むたびに台が床を叩いて「カタカタ」と鳴ります
機種によっては、ペダルの台の下に、床との高さを合わせるアジャスター(ねじ)が付いています。
台が浮いたままだと、踏むたびに台がたわんで床を叩きます。
取扱説明書の組み立ての項で、アジャスターの調整方法を確認してください。
そのうえで、ペダルの下に小さめの防振パッドを敷き、踏み切らずに必要な深さで止める踏み方を意識します。
足で踏むペダルの振動を、ペダルの下だけで止める考え方は、電子ドラムのキックペダルと共通です。
詳しくは電子ドラムの振動対策|ふにゃふにゃシステムの効果と限界、キックの止め方で解説しています。
調整と防振をしても鳴る場合は、本体側の不具合のこともあるので、メーカーのサポートに相談します。
「気にしていたら練習できない」への答え:判例から分かる線引き
毎日練習したい人にとって、「打鍵音まで気にするのは無理」というのが本音だと思います。
ただ、楽器の音は、下の階の人にとって、生活の中で出る音とは受け取り方が違います。
それが分かる裁判例があります。
小さな音でも、深夜は受忍限度を超えるとされた例
東京地方裁判所の平成26年3月25日の判決は、マンションの下の階の住人の歌声について、上の階の住人が損害賠償を求めた事例です。
公害等調整委員会の資料によると、判決の要点は次のとおりです。
- 上の階の部屋に届いた歌声は、最大41dB程度で、条例の規制基準は超えていなかった
- それでも、深夜(午後11時〜午前6時)の歌声は受忍限度を超えるとされた
- 理由として、歌声が生活音とは異質な音であること、41dBでも入眠の妨げになりうること、建物の中では規制基準より厳しい値が求められると考えられることが挙げられた
- 慰謝料などとして、夫婦に合計36万円の支払いが命じられた。一方で、昼間の作曲作業の音は、受忍限度を超えるとはされなかった
40dBは、図書館の館内や、住宅地の夜くらいの静かさです。
この事例はピアノではなく歌声ですが、楽器の音にも同じ考え方が当てはまりえます。
練習をやめるのではなく、時間と対策で線を引く
この判決から分かるのは、次の2点です。
- 音の大きさだけでは決まらない : 時間帯と、音の種類(生活音か、演奏の音か)が判断に入ります
- 昼間の音は、受忍限度の内とされた : 練習そのものをやめる必要はありません
つまり、深夜と早朝は、ヘッドホンをしていても打鍵音とペダル音が届く前提で、弾く時間を区切るのが現実的な線引きです。
そのうえで、マットとペダルの対策をしておけば、「できることはしている」と説明できます。
マンションで何時まで弾けるかの目安は、マンションで楽器は何時まで?規約例は9〜21時|条例と受忍限度で判断で解説しています。
苦情が来たときの対応と、ほかの判例は、騒音苦情への正しい対応|解決事例と判例から学ぶ受忍限度の境界線にまとめています。
個別の事例が法的にどう判断されるかは、事情によって変わります。
実際にトラブルになっている場合は、弁護士や自治体の相談窓口に確認してください。
マットで足りないときは、防音室も選択肢になる
深夜にも練習したい、アコースティックピアノに替えたい、という場合は、マットと弾き方の対策だけでは足りません。
ピアノ向けの防音室は、遮音と防振をまとめて解決する選択肢です。
アップライト・グランド別の費用と、マンションに置くときの条件は、ピアノ防音室ガイド|アップライト・グランド別の費用とマンション設置の条件で解説しています。
よくある質問
ヘッドホンで弾いていれば、苦情は来ませんか?
来ないとは限りません。
ヘッドホンで消えるのはスピーカーの電子音だけで、打鍵音とペダル音は床から下の階に届きます。
電子ピアノの下に、ジョイントマットを敷けば足りますか?
軽い打鍵音には多少効きますが、足りないことが多いです。
軽くて柔らかいマットは振動を止めにくく、ペダルの「トン」はほとんど通ります。
重さと密度のある、電子ピアノ用の防振マットを選んでください。
夜は何時まで弾いてもいいですか?
管理規約や地域で変わるので、まず規約を確認します。
ヘッドホンで弾く場合も、深夜と早朝は打鍵音が届く前提で考えてください。
打鍵音が小さい電子ピアノはありますか?
鍵盤の機構に、緩衝材で当たる音を抑える工夫をしている機種もあります。
ただし、強く弾けば底に当たる衝撃は出るので、マットとペダルの対策は機種にかかわらず必要です。
まとめ
電子ピアノの打鍵音対策は、ヘッドホンでは消えない打鍵音とペダル音を、床に伝えないことが中心です。
打鍵音は本体の脚から、ペダル音はペダルの台から床に入るので、それぞれ別に対策します。
集合住宅やフローリングなら、重さと密度のある防振マットを、ペダルと椅子の下まで敷きます。
ペダルは、台が浮いていないかを確かめ、踏み切らない踏み方を意識します。
判例では、小さな音でも深夜の演奏の音は受忍限度を超えるとされた例があります。
練習をやめるのではなく、深夜と早朝を避け、対策をしたうえで弾くのが現実的な線引きです。