「奮発して3万円のマイクを買ったのに、思ったほど音が良くない…」 「配信を見返すと、自分の声がお風呂場みたいに響いている…」
そんな悩みをお持ちのVTuberさん。もしかして、「マイクのせい」だと思っていませんか? 実はそれ、「部屋(空間)」のせいかもしれません。
どれだけ高級なマイクを使っても、録音環境が「ただの部屋」や「反響だらけの箱」では、その性能の半分も発揮できません。 逆に言えば、安いマイクでも「空間」さえ整えれば、プロ顔負けのクリアな音質を手に入れることができます。
この記事では、防音室と吸音材を使って、マイクの性能を120%引き出すための音響調整テクニックを解説します。
防音室の弱点「フラッターエコー」とは?#
「防音室を買えば、自動的に良い音で録れる」 これは大きな間違いです。
実は、買ったばかりの(吸音対策をしていない)防音室の中は、録音環境としては最悪です。 壁が硬くて狭い空間では、音が壁と壁の間で何度も反射を繰り返します。これを「フラッターエコー(定常波)」と呼びます。
手を叩くと「ビィィィン…」という金属音のような響きが聞こえませんか? もし聞こえるなら、あなたの配信の声には常にその不快なノイズが乗っています。これが「音が悪い」「声がこもる」正体です。
防音室は「外の音を遮断する」のが仕事で、「中の響きを整える」仕事はしてくれません。それはあなたの役目です。
マイク性能を120%引き出す吸音材の配置ルール#
では、どうすれば響きを消せるのか?答えは「吸音材」です。 しかし、ここでもよくある間違いがあります。「壁全面に吸音材を貼り詰める」ことです。
やりすぎると音が死んでしまい、逆に「詰まったような声」になってしまいます。 効率よく、かつ効果的に響きを止めるための「ゴールデンルール」を紹介します。
1. マイクの背面をガード(最優先)#
コンデンサーマイクの多くは、正面の音を拾う「単一指向性」です。しかし、実は**背面の音(壁から跳ね返ってきた音)**も多少拾ってしまいます。 まず、マイクの後ろ側の壁に吸音材を貼りましょう。
2. 人間の背面(マイクの正面)をガード#
あなたが喋った声は、あなたの後ろの壁に当たって跳ね返り、再びマイクに向かっていきます。 これも防ぐため、自分の背中側の壁にも吸音材を貼ります。
3. 「耳の高さ」に貼る#
座った状態の、自分とマイクの高さに合わせてぐるっと貼ります。床や天井付近は後回しでOKです。
この3点を抑えるだけで、不快な反響音の8割はカットできます。
VTuberにおすすめのマイクと設定#
環境が整ったら、改めて機材の話です。 防音室環境があるなら、マイク選びは「コンデンサーマイク」一択です。
ダイナミック vs コンデンサー#
- ダイナミックマイク(Shure SM58など): 丈夫で雑音に強いが、感度が低い。口元まで近づけないと拾わない。防音されていない部屋向け。
- コンデンサーマイク(Audio-Technica AT2020、Blue Yetiなど): 感度がめちゃくちゃ高い。部屋の空気感や、吐息などの繊細な音まで拾う。
防音室がない部屋でコンデンサーマイクを使うと、エアコンの音や外の車の音まで拾ってしまいノイズまみれになります。 しかし、静寂が手に入る防音室なら、コンデンサーマイクのポテンシャルを最大限に発揮できます。 ウィスパーボイスやASMR的な表現をするVTuberには必須の組み合わせです。
よくある設定ミス:ゲイン上げすぎ問題#
「音が小さいから」といって、オーディオインターフェースの「GAIN(入力感度)」をMAXにしていませんか? これだと「サーーッ」というホワイトノイズが乗ってしまいます。 マイクとの距離を「拳1個分」まで近づけ、ゲインは必要最小限にするのが、ノイズレスで太い声を録るコツです。
ASMR配信者のための「静寂」の作り方#
ASMRをやるなら、さらにシビアな環境が必要です。 防音室は必須ですが、それだけでは足りません。
1. PCファンノイズを殺す#
ASMRマイク(バイノーラルマイク)は、PCの「フォーン」というファンの音を強烈に拾います。 前回の記事で紹介した「PCの排熱対策(外出し)」は、ASMRにおいても最強のソリューションです。
2. 自分自身のノイズを消す#
- 服の摩擦音: シャカシャカする服(ナイロンなど)はNG。綿やニットを着ましょう。
- 椅子のきしみ: ギシギシ鳴るゲーミングチェアは敵です。潤滑油を差すか、パイプ椅子の方がマシな場合も。
- リップノイズ: 唇が乾いていると「ペチャッ」という音が乗ります。水分補給とリップクリームを忘れずに。
まとめ:クリアな声は「推される」ための武器#
どんなに素晴らしいトークも、可愛らしいガワ(アバター)も、声がガサガサだと魅力が半減してしまいます。 (逆に、音質が良いだけでプロっぽく聞こえ、安心感を与えられます)
- 防音室の反響(フラッターエコー)を消す。
- 吸音材をマイクと自分の背面に貼る。
- コンデンサーマイクで繊細な表現を。
これらの対策は、数千円の吸音材から始められます。 まずは自分の配信環境の「音の響き」に耳を傾けてみてください。きっと、もっと良くできるはずです。
