「Dr-35の防音室を買ったから、これで夜中も吹き放題だ!」
そう思って深夜に練習していたら、翌日家族や隣人から「うるさかった」と苦情が…。そんなゾッとする経験をしたことはありませんか?

結論から言います。
トランペットの爆音は、並大抵の防音室では止まりません。
しかし、諦めるのはまだ早いです。 カタログスペックのDr値だけに頼らず、「内装の吸音」と「配置」を工夫することで、体感遮音性能を劇的に上げることができます。
今回は、110dB超の轟音をねじ伏せるための、最強の防音室カスタム術を伝授します。
トランペットの「110dB」はジェット機並み。なぜDr-35では夜間練習が無理なのか#
数値で見る残酷な現実#
まず、敵(トランペットの音)を知りましょう。 トランペットの音圧レベルは、通常でも 100dB、プロがff(フォルテッシモ)で吹けば 128dB に達することさえあります。これはジェット機のエンジン音や、落雷の音に近いレベルです。
ここで簡単な引き算をします。
110dB(楽器音) - 35dB(Dr-35防音室) = 75dB(外に漏れる音)
75dB というのは、「掃除機の音」や「騒がしい街頭」レベルの大きさです。
日中なら生活音に紛れて許されるかもしれません。 しかし、日本の住宅街の深夜(22時以降)の静けさは 30〜40dB 程度です。静寂の中で掃除機を全開にすれば、確実に苦情が来ます。
深夜に吹くならDr-40〜45が必要#
深夜に気兼ねなく練習したいなら、外に漏れる音を少なくとも40dB台まで落とす必要があります。 つまり、防音室には Dr-40(Sクラス)以上、できれば Dr-45 の性能が必須ラインとなります。
Dr-40でも足りない時にやるべき「最強防音室カスタム」#
「すでにDr-35の部屋を買ってしまった…」 「Dr-40だけど、まだ不安だ」
そんなあなたにおすすめしたいのが、 「吸音」によるドーピング です。
吸音の魔法:音を「殺してから」壁にぶつける#
防音には「遮音(壁で止める)」と「吸音(スポンジで消す)」の2つがあります。 狭い防音室の中でトランペットを吹くと、音エネルギーが壁と壁の間で反射し続け、増幅されてしまいます(音が飽和する状態)。
そこで、室内に 吸音材 を多めに貼ります。 壁に音がぶつかる前に、スポンジが音のエネルギーを熱エネルギーに変えて消費してくれます。これにより、壁を突き抜けようとする力そのものを弱めることができるのです。
配置の極意:ベルを向けるな#
弱点から目を逸らす 防音室の弱点は「ドア」と「換気扇」です。これらに向かってベルを吹くのは、敵の本丸に大砲を撃つようなものです。必ず「壁の厚い方」や「窓のない方」 にベルを向けてください。
距離こそ正義 ベルと壁の距離が近いと、音圧が減衰せずに壁を直撃します。できれば 1.2畳以上、理想は1.5畳の部屋を選び、壁から離れて立ちましょう。数10cmの距離が、遮音性能に大きく響きます。
唇がバテない「響き」の作り方。デッドにしすぎないコツ#
「防音重視で吸音材を全面に貼ったら、音が全く響かなくて気持ち悪い」 これもよくある失敗です。
いわゆる「デッド(響きがない)」すぎる部屋では、自分の音が聞こえにくいため、無意識に無理な力で吹いてしまいます。 これでは唇がすぐにバテてしまい、悪い癖もつきます。
推奨:“ライブ"なポイントを残す#
- ベルの正面 : あえて吸音材を貼らず、硬い板などを置いて音を反射させます。
- 側面と背面 : ここには吸音材をたっぷりと貼ります。
こうすることで、「自分の音の返り(モニター)」は確保しつつ、部屋全体に広がる無駄な残響エネルギーだけをカットできます。 これが、長時間吹いても疲れないプロのスタジオの響きです。
まとめ:工夫を駆使して練習を勝ち取る#
トランペットの防音は、防音室を買って終わりではありません。そこからがスタートです。
- 性能 : 深夜ならDr-40以上を狙う。
- 吸音 : 室内でエネルギーを減衰させ、外への漏れを防ぐ。
- 配置 : ドアや換気扇にベルを向けない。
カタログ値を過信せず、これらの工夫を凝らすことで、深夜のff(フォルテッシモ)を手に入れましょう。あなたの情熱は、もう誰にも止められません。
関連記事#
- [吸音材の選び方] : 吸音材と遮音材の違いとは?
- [防音室の選び方] : ユニット防音室のサイズと選び方
