「DIYした防音室、どれくらい効果があるのか数字で知りたい」 「隣人トラブルに備えて、客観的な証拠を残しておきたい」
音の悩みは目に見えないからこそ、具体的な「数値」で把握することが安心への第一歩です。 なんとなく「静かになった気がする」だけでは、いざという時の証明になりません。
この記事では、市販の騒音計を使って正確な防音性能(D値)を算出するための測定手順と記録の残し方を、プロの視点を交えて実践的に解説します。
測定の準備:正しい条件を整える#
正確なデータを取るためには、測定前の準備が8割です。
1. 必要な道具#
- 騒音計:スマホアプリではなく、**A特性(dBA)**が測れる専用機を推奨(3,000円〜)。
- 音源:Bluetoothスピーカー(一定の音量を出せるもの)。
- ピンクノイズ:全周波数帯域が均等に含まれる「ザーッ」というノイズ音。YouTubeなどに音源があります。
- 三脚(あれば):手持ちノイズを防ぐため、固定できるとベストです。
2. 環境の静音化(暗騒音の除去)#
測定の最大の敵は**「暗騒音(あんそうおん)」**です。 エアコン、冷蔵庫のブーンという音、外の車の音などが大きいと、正確な遮音性能が測れません。
- 家電(エアコン・換気扇・空気清浄機)をすべてOFFにする
- 窓を閉め、カーテンを閉める
- 深夜や早朝など、外が静かな時間帯を選ぶ
実践!防音性能(D値)の測定5ステップ#
防音性能(D値)とは、**「その壁がどれだけ音を減らしたか(引き算)」**の数値です。
ステップ1:背景騒音(暗騒音)を測る#
まず、音源を鳴らしていない状態で、部屋の静かさを測ります。
- 測定場所:防音室の外(または測定したい部屋)
- 状態:無音
- 目標値:30dB〜40dB以下
これ以上騒がしい(例:50dBある)と、防音性能が40dBあっても正しく測定できません。
ステップ2:音源室で「発生音(A)」を測る#
防音室の中で、スピーカーから音を出して測定します。
- ピンクノイズを再生(かなり大きめの音量で)。
- スピーカーから1m離れた位置に騒音計を置く。
- 安定した数値を記録します。(例:95dB)
[!TIP] 実際の楽器(ピアノ等)で測る場合は、フォルテ(強奏)で弾いた時の「MAX値」を記録しましょう。
ステップ3:受音室で「漏れた音(B)」を測る#
音量はそのまま変えずに、ドアを閉めて「外(隣の部屋など)」に移動します。
- 防音室の壁から1m離れた位置で測定。
- 安定した数値を記録します。(例:55dB)
ステップ4:差分を計算する#
単純な引き算です。
$$\text{遮音性能(D値)} = \text{発生音(A)} - \text{漏れた音(B)}$$今回の例なら: 95dB - 55dB = 40dB
つまり、この防音室には**「D-40(音を40dB減らす能力)」**があるということです。
| 計算結果(D値) | 評価 | ピアノ演奏 | ドラム演奏 |
|---|---|---|---|
| D-30以下 | 低い | うるさい | 不可 |
| D-35〜40 | 普通 | 夜間NG | 不可 |
| D-45〜50 | 優秀 | ほぼOK | 夜間NG |
| D-55以上 | 完璧 | 24時間OK | ほぼOK |
ステップ5:記録を残す#
測定データは、「いつ・誰が・どう測ったか」が分からないと証拠能力が落ちます。以下のフォーマットで記録を残しましょう。
【防音効果測定記録】
- 日時:202X年○月○日 22:00
- 天候:晴れ・無風
- 測定器:サンワサプライ 400-TST005
- 測定設定:A特性 / FASTモード
- 暗騒音:34dB
- 音源:JBLスピーカー(ピンクノイズ再生)
- 測定値A(室内):94.5dB
- 測定値B(壁外):52.3dB
- 結果(D値):42.2dB
写真(騒音計の画面と測定状況)も一緒に保存しておくと完璧です。
測定時の注意点とよくある失敗#
1. 「A特性」と「C特性」を間違えない#
騒音計にはモード切替があります。
- A特性 (dBA):人間の耳の聞こえ方に補正した数値。防音測定の基本はこちら。
- C特性 (dBC):低音域をカットしない物理的な音圧。ドラムなどの重低音チェック用。
通常は**「dBA」**になっているか必ず確認してください。
2. 体で音を遮らない#
騒音計を手で持つときは、体から離して、腕を突き出すように持ちましょう。 自分の体が壁になって音を反射・吸収し、数値がズレる(1〜2dB)ことがあります。三脚の使用が推奨されるのはこのためです。
3. 反射音に注意#
壁の目の前(数センチ)で測ると、壁に跳ね返った音(反射音)が重なって、実際より大きな数値が出ることがあります。 必ず**壁から1m(最低でも50cm)**は離れて測定しましょう。
まとめ:数値は嘘をつかない#
「なんとなくうるさい気がする」という感覚値は、その日の体調や精神状態によって変わります。 しかし、「D-40の性能がある」という数値は、揺るぎない事実です。
- 暗騒音を消す(静かな環境を作る)
- A特性で測る
- 引き算でD値を出す
- 詳細に記録する
この手順を守れば、DIYの効果測定はもちろん、近隣住民への説明や、防音業者との交渉でも強力な武器になります。 まずはレンタルや安価な騒音計からで構いません。一度、自分の部屋の「実力」を測ってみませんか?
