「ユニット防音室を買えば、家でドラムが叩ける!」 もしそう思っているなら、一度立ち止まってください。
残酷な現実をお伝えします。 市販の組立式防音室(Dr-35〜40)で生ドラムを叩くと、近隣から即座に警察を呼ばれます。
ドラムの防音は、他の楽器とは次元が異なります。なぜそこまで難しいのか、何をすれば叩けるようになるのか、解説します。
ドラム防音の2つの巨大な敵#
1. 爆発的な音圧(110dB〜120dB)#
ドラムセットの音量は、ジェット機のエンジンの近くと同じレベルです。 Dr-40の防音室を使っても、外には「70dB〜80dB」の音が漏れます。これは「騒々しい街頭」「セミの鳴き声の至近距離」と同じレベルです。 閑静な住宅街でこれが聞こえたら、間違いなく騒音問題になります。
2. 地面を揺らす重低音振動(個体伝搬音)#
これが真のボスです。 バスドラム(キック)を踏むと、人間がドスンとジャンプしたような衝撃が床に伝わります。 この「ドスン!」という振動は、建物のコンクリートを伝って、隣の家だけでなく、マンションの上下斜め全ての部屋に響き渡ります。
壁で空気を遮断しても、振動は止まりません。
ユニット防音室ではドラムは無理なのか?#
基本的には「無理」です。 ただし、以下の条件付きで「電子ドラム」や「特注モデル」なら可能性があります。
- 通常のユニット(Dr-35/40):
- 生ドラム: 不可。
- 電子ドラム: 叩く音(パッド音)とペダルの振動が階下に響くため、ディスクふにゃふにゃシステム等の強力な防振ステージが必要。
- 高遮音ユニット(Dr-50等の特注品):
- ヤマハやカワイには、ドラム専用の特注防音室があります。これなら生ドラムも可能ですが、価格は300万円〜と跳ね上がります。
生ドラムを叩く唯一の解:スタジオ工事(Dr-65)#
自宅で生ドラムを叩くなら、ユニットではなく「防音工事(リフォーム)」が必要です。 しかも、ただの工事ではありません。
「部屋の中に浮いたコンクリートの部屋」を作る#
- 浮き床(浮遮音層):
- ゴムやスプリングで、床をコンクリートごと浮かせます。
- 壁・天井の完全絶縁:
- 内側の部屋が、建物のどこにも触れていない状態を作ります。
- 質量で止める:
- 重たいコンクリートブロックなどを積み上げ、物理的な重さで音を止めます。
ここまでやって初めて「Dr-65〜Dr-70」という性能が出せます。 費用は6畳で400万円〜、マンションなら500万円以上かかるのが一般的です。
まとめ:集合住宅でドラムを叩くなら「防音+防振」が必須#
ユニット型の防音室でも、空気中を伝わる「音(鳴り)」自体はかなり軽減してくれます。 しかし、ドラムにおいて本当の敵となるのは、ペダルを踏んだ衝撃が床を伝わる「振動(個体伝搬音)」です。
- 戸建て(1階)の場合:
- ユニット防音室を導入するだけで、近隣トラブルを防げる可能性が高いです。
- マンション・アパート(2階以上)の場合:
- ここが最難関です。壁の防音だけでなく、床に伝わる衝撃を物理的に遮断する「強力な防振対策(浮き床など)」が不可欠です。
集合住宅でドラムを叩くなら、「音を止める」だけでなく、「床への振動を止める」ことまでセットで考えてください。 安易な対策ではトラブルになりますが、正しい防振構造さえ作れれば、自宅でドラムを楽しむことは不可能ではありません。
