動画配信市場の拡大とともに、シェア型配信スタジオの需要が急増しています。個人クリエイターから企業まで、プロ品質の配信環境を「時間単位」で利用できるスタジオが、都市部を中心に急速に拡大しています。
本記事では、シェア型配信スタジオ市場の成長要因、利用料金の相場、都市別の稼働率データ、そして2025年以降の市場予測を、最新のデータに基づいて分析します。
シェア型配信スタジオ市場はなぜ急成長しているのか#
シェア型配信スタジオ市場は、2020年以降、年率15〜20%の成長率を維持しています。この急成長の背景には、4つの主要要因があります。
動画・ライブ配信市場の拡大#
動画配信市場全体の拡大が、シェア型スタジオの需要を押し上げています。総務省の調査によると、日本の動画配信市場規模は2024年に約2兆5,000億円に達し、前年比で15%以上の成長を記録しています。
YouTube、TikTok、Twitchなどのプラットフォームでのコンテンツ制作需要が増加し、個人クリエイターの数も急増しています。2024年時点で、YouTubeチャンネル登録者数1万人以上のクリエイターは、日本国内で約15万人に達しています。
企業のオンラインイベント・ウェビナー需要の増加#
コロナ禍以降、企業のオンラインイベント・ウェビナー需要が定着しました。2024年時点で、従業員100人以上の企業の約75%が、定期的にオンラインイベントを開催しています。
新製品発表会、社内イベント、オンライン説明会など、企業が外部スタジオを利用するケースが増加しています。特に、プロ品質の配信環境を必要とする企業イベントでは、シェア型スタジオの利用が主流となっています。
個人クリエイターの増加(YouTuber、VTuber、TikTokクリエイター)#
個人クリエイター層の拡大が、シェア型スタジオの主要な需要源となっています。
YouTuber
- 2024年時点で、日本国内のYouTubeチャンネル登録者数10万人以上のクリエイターは約3,000人
- 高品質な撮影環境を求めるクリエイターが増加
VTuber
- VTuber市場は2024年に約200億円規模に成長
- 3Dモデル配信には高品質なスタジオ環境が必須
TikTokクリエイター
- TikTok日本市場のクリエイター数は2024年時点で約500万人
- 「背景映え」するスタジオでの撮影需要が急増
専有スタジオの高コスト → “時間貸し"需要の急伸#
専有スタジオの建設・維持コストが高額であることが、シェア型スタジオの需要を後押ししています。
専有スタジオの初期投資は、防音施工・設備投資を含めて500万円〜2,000万円以上かかります。一方、シェア型スタジオは1時間3,000円〜10,000円程度で利用できるため、個人クリエイターや中小企業にとって、コスト効率の高い選択肢となっています。
都市部を中心にシェア型スタジオが増えた背景#
シェア型スタジオは、都市部を中心に急速に拡大しています。2024年時点で、東京23区内には約200以上のシェア型配信スタジオが存在しています。
都市部での需要集中の理由は以下の通りです。
- 交通アクセスの良さ: クリエイターや企業のスタッフがアクセスしやすい
- 機材・サービス業者の集積: スタジオ運営に必要な機材業者や技術スタッフが集積
- 需要の集中: クリエイターや企業が都市部に集中している
シェア型配信スタジオとは何か|特徴と仕組み#
シェア型配信スタジオは、「時間貸し × プロ設備付き」というスタイルの配信環境提供サービスです。利用者は、必要な時間だけ、プロ品質の配信設備を利用できます。
“時間貸し × プロ設備付き"というスタイル#
シェア型スタジオの基本モデルは、時間単位でのレンタルです。利用者は、1時間単位から数時間単位でスタジオを借り、プロ品質の配信設備を使用できます。
一般的な利用時間は、個人クリエイターで2〜4時間、企業イベントで4〜8時間程度です。長時間利用や定期利用には、割引プランが用意されている場合があります。
防音・遮音設計/高速回線/照明・カメラ・音響設備#
シェア型スタジオには、プロ品質の配信に必要な設備が揃っています。
防音・遮音設計
- 遮音性能D-50以上(一般的な配信用途)
- 高級スタジオではD-60以上
- 外部音の遮断と、内部音の漏れ防止を両立
高速回線
- 上り回線100Mbps以上(4K配信対応)
- 有線LAN接続が標準
- 安定した配信環境を提供
照明・カメラ・音響設備
- プロ用LED照明(3点照明セット)
- 4K対応カメラ(複数台設置)
- 高品質マイク(コンデンサーマイク、ワイヤレスマイク)
- ミキサー・オーディオインターフェース
グリーンバック、白ホリ、スイッチャーなどの業務用機材#
高級スタジオでは、より高度な機材が用意されています。
グリーンバック・白ホリ
- クロマキー合成用のグリーンバック
- 白背景撮影用の白ホリセット
- 背景変更が容易
スイッチャー・配信機材
- 映像スイッチャー(複数カメラの切り替え)
- 配信エンコーダー(OBS、vMix対応)
- リアルタイム配信環境
その他業務用機材
- プロンプター(原稿表示装置)
- モニター(複数台)
- 音響機材(エフェクター、コンプレッサー)
手ぶら利用・スタッフ付きなど運営モデルの種類#
シェア型スタジオには、複数の運営モデルがあります。
基本モデル(セルフサービス)
- 利用者が自分で機材を操作
- 料金が比較的安価(1時間3,000円〜8,000円)
- 機材操作の知識が必要
手ぶら利用モデル
- 機材のセットアップをスタジオ側が実施
- 利用者は到着後すぐに配信開始可能
- 料金は基本モデルより高め(1時間5,000円〜12,000円)
スタッフ付きモデル
- 技術スタッフが配信をサポート
- カメラワーク、音響調整、配信操作を代行
- 料金は高額(1時間15,000円〜30,000円、または1枠5万円〜20万円)
利用料金の相場|個人・企業でどう違うか#
シェア型配信スタジオの利用料金は、個人向けと法人向けで大きく異なります。また、立地、設備レベル、利用時間によっても料金が変動します。
個人クリエイター向けの料金帯#
個人クリエイター向けの料金は、1時間3,000円〜18,000円が相場です。
基本料金帯(1時間3,000円〜10,000円)
- セルフサービス型スタジオ
- 基本的な配信設備(カメラ、マイク、照明)
- 都心部以外、または都心部の簡易スタジオ
都心プレミアム帯(1時間10,000円〜18,000円)
- 渋谷・六本木・新宿などの都心エリア
- 高品質な設備(4Kカメラ、プロ用照明、グリーンバック)
- 手ぶら利用プラン
深夜料金・長時間レンタル割引
- 深夜時間帯(22時〜翌朝6時)は20〜30%割引
- 4時間以上の利用で10〜20%割引
- 月間利用回数に応じた会員割引(10〜15%割引)
法人/イベント向けスタジオの料金帯#
法人・イベント向けの料金は、個人向けより高額です。
基本料金(1時間15,000円〜30,000円)
- 企業向けスタジオ
- 高品質な設備と広いスペース
- 複数カメラ、高度な音響設備
フルセットプラン(1枠5万円〜20万円)
- 技術スタッフ・スイッチング込み
- 配信代行サービス
- イベント全体の運営サポート
背景セット変更・配信代行サービスの追加費用
- 背景セット変更:5,000円〜15,000円
- 配信代行(技術スタッフ):1時間10,000円〜20,000円
- 機材レンタル追加:1点5,000円〜20,000円
コスト構造(参考)#
シェア型スタジオの料金設定は、以下のコスト構造に基づいています。
立地コスト(駅近ほど高騰)
- 都心部の駅近物件:家賃が月額50万円〜150万円
- 地方都市:月額20万円〜50万円
- 立地コストが料金に反映
防音施工・光回線・設備投資
- 防音施工:100万円〜500万円(規模による)
- 光回線:月額5万円〜15万円(高速回線)
- 設備投資:200万円〜1,000万円(機材レベルによる)
技術スタッフの確保
- 技術スタッフの人件費:時給3,000円〜5,000円
- スタッフ付きプランでは人件費が料金に反映
稼働率の最新データ|都市別の傾向#
シェア型配信スタジオの稼働率は、都市やエリアによって大きく異なります。2024年の最新データに基づいて、都市別の稼働率を分析します。
東京:渋谷・六本木・新宿エリアの稼働率#
東京23区内のシェア型スタジオは、高い稼働率を維持しています。
平日の稼働率:50〜70%
- 企業のウェビナー・オンラインイベント需要が中心
- 平日昼間の利用が多い
- 都心部のスタジオは平日でも高い稼働率
土日祝の稼働率:80〜95%
- 個人クリエイターの利用が集中
- TikTok・YouTube撮影需要が急増
- 人気スタジオは土日祝が満室になることが多い
TikTok・YouTube撮影需要の急増
- TikTok撮影需要が2023年比で約2倍に増加
- YouTube撮影需要も前年比30%増
- 「背景映え」するスタジオが特に人気
大阪:梅田・心斎橋周辺#
大阪エリアのシェア型スタジオは、東京より稼働率は低めですが、堅調な需要を維持しています。
平日の稼働率:40〜60%
- 企業イベント需要が中心
- 東京より平日稼働率は低め
イベント・ゲーム実況需要が強い
- ゲーム実況配信の需要が高い
- eスポーツイベントの配信需要
- 企業イベントの利用も増加
その他地方都市(名古屋・福岡)#
地方都市のシェア型スタジオは、需要は堅調ですが、平日稼働率は東京より低い傾向があります。
平日稼働率:30〜50%
- 東京より平日稼働率は低い
- 企業ウェビナー需要が中心
需要は堅調
- 個人クリエイターの利用が増加
- 企業イベント需要も拡大
- 地方都市でもシェア型スタジオの認知度が向上
稼働率を押し上げている要因#
シェア型スタジオの稼働率を押し上げている要因は、以下の通りです。
“背景映え"するスタジオが人気
- SNSで「映える」背景が求められる
- インテリアにこだわったスタジオが人気
- 背景のバリエーションが多いスタジオが選ばれる
手ぶら利用・スタッフ付きプランの増加
- 機材操作の知識がなくても利用できる
- 利用のハードルが下がり、需要が拡大
- 企業イベントでの利用が増加
SNSでの口コミ拡散
- TikTok、Instagramでのスタジオ紹介動画が拡散
- 口コミによる認知度向上
- 人気スタジオは予約が取りにくい状況
主要ユーザー層の分析#
シェア型配信スタジオの利用者は、個人クリエイター層と法人・企業用途に大きく分けられます。それぞれの利用動向を分析します。
個人クリエイター層(主力層)#
個人クリエイター層が、シェア型スタジオの主力ユーザーです。
ゲーム実況者・VTuber
- ゲーム実況配信の需要が高い
- VTuberの3D配信には高品質なスタジオ環境が必須
- 週1〜2回の利用が一般的
YouTuber・TikToker
- YouTube撮影需要が増加
- TikTok撮影需要が急増
- 月2〜4回の利用が一般的
ASMR・歌ってみた系
- ASMR制作には高品質な録音環境が必要
- 歌ってみた動画の撮影需要
- 月1〜2回の利用が一般的
法人/企業用途#
法人・企業の利用も増加しています。
新製品発表
- 新製品発表会のオンライン配信
- プロ品質の配信環境が必要
- 年数回の利用
社内イベント
- 社内イベントのオンライン配信
- リモートワーク環境での社内コミュニケーション
- 月1回程度の利用
ウェビナー・オンライン説明会
- 顧客向けウェビナーの開催
- オンライン説明会の配信
- 月2〜4回の利用
eスポーツ大会配信
- eスポーツ大会の配信
- 複数カメラ、高度な音響設備が必要
- 年数回の利用
スタジオ利用が増えている理由#
スタジオ利用が増えている理由は、以下の通りです。
自宅では防音・照明が不足
- 自宅での配信環境が不十分
- 防音性能が低く、近隣への配慮が必要
- プロ品質の照明環境がない
賃貸住居での音量制限
- 賃貸住居では音量制限がある
- 楽器演奏や大声での配信が難しい
- 24時間配信ができない
“手ぶらでプロ品質"が手軽
- 機材を揃える必要がない
- プロ品質の配信環境を手軽に利用できる
- コスト効率が高い
都市別のスタジオ分布と市場規模傾向#
シェア型配信スタジオは、都市部を中心に分布しています。都市別のスタジオ分布と市場規模の傾向を分析します。
東京23区:スタジオ密度が最も高い#
東京23区内には、約200以上のシェア型配信スタジオが存在します。スタジオ密度が最も高く、競争も激しいエリアです。
主要エリア
- 渋谷・六本木エリア:約50スタジオ
- 新宿エリア:約40スタジオ
- 池袋・上野エリア:約30スタジオ
- その他エリア:約80スタジオ
市場規模
- 東京23区内のシェア型スタジオ市場規模:約50億円(2024年)
- 前年比で約20%成長
大阪:配信特化・ゲーム系スタジオの成長#
大阪エリアでは、配信特化型・ゲーム系スタジオの成長が目立ちます。
主要エリア
- 梅田・心斎橋エリア:約30スタジオ
- その他エリア:約20スタジオ
市場規模
- 大阪エリアのシェア型スタジオ市場規模:約15億円(2024年)
- 前年比で約25%成長
名古屋・福岡:企業ウェビナー需要が増加#
名古屋・福岡エリアでは、企業ウェビナー需要が増加しています。
主要エリア
- 名古屋:約15スタジオ
- 福岡:約10スタジオ
市場規模
- 名古屋・福岡エリアの市場規模:約8億円(2024年)
- 前年比で約30%成長
地方都市:写真スタジオからの派生業態も増加#
地方都市では、写真スタジオからの派生業態も増加しています。既存の写真スタジオが、配信スタジオとしても活用されるケースが増えています。
今後の市場予測|2025〜2030年の展望#
シェア型配信スタジオ市場は、今後も成長が続くと予測されます。2025年以降の市場予測を分析します。
年率10〜20%の成長予測(配信市場と連動)#
シェア型配信スタジオ市場は、2025年から2030年にかけて、年率10〜20%の成長が予測されます。動画配信市場全体の成長と連動して、シェア型スタジオの需要も拡大します。
市場規模予測
- 2025年:約80億円
- 2030年:約150億円〜200億円
シェア型スタジオ × サブスクモデルの登場#
今後、シェア型スタジオとサブスクモデルを組み合わせたサービスが登場すると予測されます。
サブスクモデルの特徴
- 月額定額で利用時間を確保
- 優先予約権の付与
- 割引料金の適用
AI配信・バーチャル撮影需要の拡大#
AI配信技術やバーチャル撮影技術の進化により、新しい需要が生まれると予測されます。
AI配信技術
- AIによる自動カメラワーク
- AIによる音響調整
- 配信品質の自動最適化
バーチャル撮影
- バーチャル背景の活用
- 3D空間での配信
- メタバース配信の需要
法人が常設スタジオを持たず、外部利用が主流化する可能性#
企業が常設スタジオを持たず、外部のシェア型スタジオを利用するケースが主流化する可能性があります。
外部利用のメリット
- 初期投資が不要
- メンテナンスコストが不要
- 柔軟な利用が可能
防音素材・省エネ設備の進化による参入増加#
防音素材や省エネ設備の進化により、新規参入が増加すると予測されます。
技術進化の影響
- 防音施工コストの低減
- 省エネ設備による運営コスト削減
- 新規参入のハードルが下がる
まとめ|シェア型配信スタジオは「都市型インフラ」へ#
シェア型配信スタジオ市場は、個人クリエイターから企業まで、幅広い層の需要を背景に急成長を続けています。
個人・企業ともに"収録場所の外部化"が加速#
個人クリエイターも企業も、専有スタジオを持つことなく、外部のシェア型スタジオを利用する傾向が強まっています。コスト効率と柔軟性の高さが、この傾向を後押ししています。
利用料金は"プロ品質への投資"として受容#
シェア型スタジオの利用料金は、プロ品質の配信環境への投資として、個人・企業ともに受容されています。1時間3,000円〜30,000円の料金は、専有スタジオの建設・維持コストと比較して、コスト効率が高い選択肢です。
高稼働率のエリアは今後も拡大#
東京23区を中心に高い稼働率を維持しているシェア型スタジオは、今後も需要が拡大すると予測されます。地方都市でも、需要の拡大が見込まれています。
動画市場の拡大とともにシェア型スタジオは定着へ#
動画配信市場の拡大とともに、シェア型配信スタジオは、都市型インフラとして定着していくでしょう。2025年以降も、年率10〜20%の成長が続くと予測されます。
