メインコンテンツへスキップ
  1. すべての記事/

RT60(残響時間)の測り方|防音室の響きを整える

·3732 文字·8 分
防音の実用ガイド RT60 残響時間 音響測定 防音室 音質調整
sasisi344
著者
sasisi344
外の音が気になったりマイクの音質とかを気にするようになったので、防音に関する総合的な情報を集めているうちに、このサイトが生まれました。
目次

防音室を作ったけど、「響きが多い」「音がこもる」と感じたことはありませんか?

その原因は、**RT60(残響時間)**が最適値に調整されていないからです。

RT60は、防音室の「音響環境を数値化」する最重要指標です。このガイドでは、RT60の測定方法、最適値、改善方法を詳しく解説します。

RT60(残響時間)とは
#

まず、基本的な理解から始めましょう。

RT60の定義
#

RT60 = 音が100dB減衰するのに要する時間

音源が発生
  ↓
最大音量(0dB)
  ↓
60dB減衰
  ↓
計測完了(この時間 = RT60)

  • RT60 = 0.3秒:音が素早く減衰(吸音が多い)
  • RT60 = 0.5秒:バランスが良い(プロレベル)
  • RT60 = 1.0秒:響きが多い(吸音が不足)

なぜRT60が重要か
#

項目RT60が短いRT60が最適RT60が長い
音の響きなし自然多い
ボーカル品質冷たい温かいぼやけた
配信・配信有利最適不利
映画鑑賞

最適なRT60

  • ポッドキャスト・配信:0.2〜0.4秒
  • ボーカル録音:0.3〜0.5秒
  • 音楽制作:0.4〜0.6秒
  • 映画鑑賞:0.5〜0.8秒

RT60を測定する方法
#

3つの測定方法をご紹介します。

方法①:スマートフォンアプリ(簡易版)
#

必要な物

  • スマートフォン
  • 無料アプリ「Room Acoustics」など
  • 音源(白色ノイズ生成機能付き)

測定手順

  1. アプリをインストール
  2. 測定モードを選択
  3. 白色ノイズを再生
  4. 音を止める(アプリが自動計測)
  5. RT60を読み取る

精度

  • ★★☆☆☆(参考値程度)
  • 傾向把握には十分
  • 正確な数値には不向き

費用

  • 無料〜¥1,000

方法②:周波数特性測定ツール(中級版)
#

必要な物

  • パソコン + 外部オーディオI/F
  • REW(Real Room EQ Wizard)無料ソフト
  • マイク(数千円〜)
  • スピーカー

測定手順

  1. REWをインストール・起動
  2. マイクとスピーカーを接続
  3. 測定信号を発生
  4. マイクで受信して計測
  5. RT60をグラフ化

精度

  • ★★★☆☆(かなり正確)
  • 周波数別のRT60も取得可
  • DIYには最適

費用

  • ソフト:無料
  • マイク:¥3,000〜10,000
  • オーディオI/F:¥10,000〜30,000
  • 合計:¥13,000〜40,000

方法③:プロ測定(高精度版)
#

提供者

  • 音響コンサルタント
  • 建築士事務所
  • 防音企業

測定内容

  • 複数周波数でのRT60測定
  • 空間特性の詳細分析
  • 改善提案レポート

精度

  • ★★★★★(最高精度)
  • 周波数別の詳細データ
  • 改善方法の専門アドバイス

費用

  • ¥50,000〜150,000

REWを使った測定方法(詳細版)
#

最もコスパが良い「REW測定」を詳しく解説します。

準備物の選び方
#

マイク選択

製品価格推奨度
BEHRINGER ECM8000¥4,000★★★★★
AT2020¥10,000★★★★☆
Shure SM7B¥25,000★★★☆☆

推奨:BEHRINGER ECM8000

  • コスパ最高
  • 平坦な周波数応答
  • 測定用の標準マイク

オーディオI/F選択

製品価格推奨度
Behringer U-PHORIA UMC202HD¥8,000★★★★★
Focusrite Scarlett Solo¥15,000★★★★☆
RME Babyface PRO¥45,000★★★☆☆

推奨:Behringer UMC202HD

  • 十分な性能
  • 手頃な価格
  • セットアップが簡単

REWのセットアップ
#

STEP1:ソフトウェアのインストール

  1. www.roomeqwizard.com にアクセス
  2. REWをダウンロード
  3. インストール実行
  4. 起動

STEP2:オーディオデバイス設定

  1. Preferences → Audio Device
  2. Output:オーディオI/Fを選択
  3. Input:マイク入力を選択
  4. Latency calibration

STEP3:スピーカー&マイク配置

【測定セットアップ】

スピーカー(オーディオI/F接続)
        ↓
    ┌────────┐
    │ 測定   │
    │ 室内  │
    │       │
    └────────┘
        ↑
   マイク(高さ1.2m)

重要なポイント

  • マイク高さ:1.2m(耳の高さ)
  • スピーカーとの距離:1〜2m
  • 室内の複数点で計測(推奨5点以上)

実際の計測手順
#

STEP1:キャリブレーション

  1. Preferences → Calibration
  2. マイク感度入力(初回のみ)
  3. 基準音圧レベル設定

STEP2:測定信号生成

  1. Measurements → New Measurement
  2. SPL(音圧レベル)を設定(85dB推奨)
  3. “Generate"をクリック
  4. スピーカーから測定信号を再生

STEP3:RT60計測

  1. REWが自動的にRT60を計測
  2. グラフにプロット
  3. 周波数別のRT60が表示される

STEP4:結果を記録

  • 全体RT60
  • 周波数別RT60(125Hz、250Hz、500Hz、1k、2kHz等)
  • グラフを画像保存

測定結果の読み方
#

RT60グラフの解釈

RT60(秒)
1.0 ┌────────────────┐
    │  ×:現在値     │
0.8 │  −:推奨範囲   │
    │    ×           │
0.6 │  ────────────  │
    │ ×              │
0.4 │ ────────────  │
    │   × ×         │
0.2 │              │
    └────────────────┘
     125 250 500 1k 2k 4k 8k
          周波数(Hz)

読み方のポイント

  • 周波数が低いほどRT60が長くなるのは自然
  • 1kHz付近の値が重要
  • 周波数別に大きく異なる場合は改善対象

最適なRT60値
#

用途別の目標RT60をご紹介します。

用途別の最適RT60
#

ポッドキャスト・配信

周波数目標RT60理由
125Hz0.3秒低音制御
500Hz0.25秒最も重要
1kHz0.2〜0.3秒人声帯域
4kHz0.2〜0.3秒明確性

推奨:全体0.2〜0.35秒


ボーカル・歌唱録音

周波数目標RT60理由
125Hz0.4秒温かみ保持
500Hz0.3秒バランス
1kHz0.3〜0.4秒自然さ
4kHz0.3〜0.4秒クリアさ

推奨:全体0.3〜0.5秒


音楽制作・DTM

周波数目標RT60
低音域0.4〜0.6秒
中音域0.35〜0.5秒
高音域0.3〜0.4秒

推奨:全体0.4〜0.6秒


映画鑑賞・ゲーム

周波数目標RT60
全体0.5〜0.8秒

RT60を調整する方法
#

測定後、最適値に調整する方法をご紹介します。

①RT60が長すぎる場合(吸音を増やす)
#

対策

対策効果
吸音材追加RT60を0.1〜0.3秒短縮
カーペット導入主に低音を吸収
吸音カーテン高音を吸収
家具配置反響を軽減

実施手順

  1. 現在のRT60を測定
  2. 目標値との差を計算
  3. 必要な吸音材量を推定
  4. 段階的に追加
  5. 各段階で再測定

推定計算式

追加吸音材面積 = (RT60差 / 0.1秒) × 現在の吸音材面積

例:RT60が0.6秒 → 0.3秒に短縮したい
(0.6 - 0.3)/ 0.1 = 3倍の吸音材が必要

②RT60が短すぎる場合(吸音を減らす)
#

対策

対策効果
吸音材を部分撤去RT60を延長
反射面を増加特に低音を延長
リバーブ追加電子的に補足

実施手順

  1. 吸音パネルを部分撤去
  2. 後面の壁を反射性に
  3. 再測定して確認

③周波数別に異なる場合(周波数別調整)
#

低音が長すぎる場合

  • バスト​ラップ(コーナー対策)を追加
  • 大型吸音材で対応

高音が長い場合

  • 高音吸音材(薄い吸音パネル)を追加

実践例:ポッドキャストボックスの最適化
#

具体例で説明します。

初期測定
#

測定結果

周波数 |  現在のRT60  | 目標RT60
-------|-------------|----------
125Hz  |   0.8秒    | 0.3秒
500Hz  |   0.5秒    | 0.25秒
1kHz   |   0.4秒    | 0.25秒
4kHz   |   0.3秒    | 0.2秒

評価

  • 低音が長すぎる(低音が強調される)
  • 高音は許容範囲
  • 全体的に吸音が不足

改善計画
#

STEP1:吸音材追加

  • 側面に吸音パネル(50mm × 4㎡)
  • 天井に吸音材(50mm × 2㎡)

STEP2:再測定

周波数 |  改善後    | 目標RT60
-------|-----------|----------
125Hz  |   0.6秒   | 0.3秒
500Hz  |   0.35秒  | 0.25秒
1kHz   |   0.3秒   | 0.25秒
4kHz   |   0.25秒  | 0.2秒

評価

  • 改善中(低音はまだ長い)
  • 中高音は目標達成

STEP3:低音対策

  • バスト​ラップをコーナーに配置

STEP4:最終測定

周波数 |  最終値    | 目標RT60
-------|-----------|----------
125Hz  |   0.3秒   | 0.3秒 ✓
500Hz  |   0.25秒  | 0.25秒 ✓
1kHz   |   0.25秒  | 0.25秒 ✓
4kHz   |   0.2秒   | 0.2秒 ✓

結果

  • 全周波数で目標達成
  • 理想的なボックス完成

測定時の注意点
#

正確な測定のためのポイントです。

測定環境の準備

  • 外部ノイズを最小化(静かな時間帯)
  • 測定前に1時間の換気・温度安定化
  • 複数点での測定(平均値を使用)
  • 湿度50%前後が理想

測定機材の確認

  • マイク感度の正確性(キャリブレーション)
  • ケーブルの断線チェック
  • オーディオI/Fのレベル設定(クリッピング防止)

測定結果の記録

  • すべての測定データを保存
  • グラフを画像化して保管
  • 改善前後の比較記録

RT60測定後の最終チェック
#

数値だけでなく、実感的な確認も重要です。

聴感テスト

  • 声が自然に聞こえるか
  • 反響がないか
  • 低音がこもっていないか
  • 高音が冷たくないか

A/Bテスト

  • 改善前の録音と改善後を比較再生
  • 差を実感することが重要

RT60測定機材のおすすめセット
#

全部揃えるなら、このセットがおすすめです。

¥30,000コース(入門)

商品価格
BEHRINGER ECM8000¥4,000
Behringer UMC202HD¥8,000
XLRケーブル(3本)¥3,000
マイクスタンド¥2,000
ポップガード¥1,000
スピーカー(PC用)¥8,000
合計¥26,000

¥50,000コース(推奨)

商品価格
上記セット¥26,000
キャリブレーションマイク¥15,000
マイク設置治具¥3,000
測定用マット¥6,000
合計¥50,000

まとめ:RT60測定は「防音室の完成度を決める」
#

重要ポイント

  • ✓ RT60は防音室の音響環境を数値化する指標
  • ✓ 用途別の最適値がある
  • ✓ REWを使えば¥30,000で正確測定可能
  • ✓ 段階的な改善が効果的
  • ✓ 周波数別の調整が重要

測定→改善のサイクル

  1. 初期測定(ベースライン把握)
  2. 目標値設定
  3. 段階的改善
  4. 再測定
  5. 微調整

正しいRT60管理があれば、防音室は完全な音響環境になります。

数値に基づいた改善で、プロレベルの環境を実現しましょう!

関連記事

賃貸での防音室運用|許可取得・特約・原状回復対策
·5276 文字·11 分
防音の実用ガイド 賃貸 防音室 許可 原状回復
100万円クラス防音室|プロ用途での到達レベル
·4186 文字·9 分
防音室 100万円 防音室 プロ用途 音楽制作 高性能
吸音材か遮音材か迷う人へ|あなたの環境で“必要なのはどっち?”徹底ガイド
·5262 文字·11 分
防音の実用ガイド 吸音材 遮音材 防音対策 DIY 組み合わせ
防音室の隙間対策|パッキン・コーキングの実践手順
·2829 文字·6 分
防音の実用ガイド 隙間対策 パッキン コーキング メンテナンス
ピアノ向け防音室の選び方|響きと遮音の最適バランス
·3274 文字·7 分
防音室 ピアノ 防音室 選び方 音響 遮音 吸音 楽器練習
防音賃貸ブランド動向|ミュージション等の最新情報
·3128 文字·7 分
市場・ニュース 防音賃貸 ミュージション ソナーレ 防音室 賃貸市場