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防音室価格ニュース2025|材料高騰とコスト最適化の今

·4067 文字·9 分
市場・ニュース 防音室 価格動向 2025年 材料費 コスト
sasisi344
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sasisi344
外の音が気になったりマイクの音質とかを気にするようになったので、防音に関する総合的な情報を集めているうちに、このサイトが生まれました。
目次

2020年以降、防音室の価格は静かに、しかし確実に上昇を続けてきました。背景には、建築資材の国際的な高騰と、慢性的な人手不足による施工コストの上昇があります。

特に2021年の「ウッドショック」を契機に、木材・石膏ボード・吸音材といった主要材料の価格は2〜3割上昇し、同時に職人の労務単価も年率2〜3%ペースで上昇。結果として、2020年当時に100万円で設置できたユニット型防音室が、2025年には130万円前後が相場という状況に変わりました。

本記事では、過去5年間(2020〜2025)の価格動向をデータから分析し、材料高騰や人件費上昇の実態を数値で整理します。そのうえで、今後のコスト最適化に向けて、設計・調達・施工の3段階でどのような工夫が求められるのかを検討します。

現状:2020→2025で何が起きたか(この記事では「市場の足元」を整理します)
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2020年以降、防音室の製造・施工に必要な建材価格と人件費が同時に上昇し、総コストは一段高に張り付いています。建設全体の物価・工事費の動向を示す公的指標では、2021年初を起点に資材価格指数が約3〜4割上昇、公共工事の設計労務単価は2021年比で約23%引上げとの整理が出ています。

結果として、材料・労務・経費を合わせた総建設コストは概ね+25〜30%のレンジで上がったと推計され、防音室(ユニット型/内装型)の見積りにもほぼ同幅のプレッシャーが波及しています。(デジコン)

この「値上がりの二段圧力(資材+労務)」は短期で元に戻る兆しは薄く、2025年時点の資材需給は総じて“均衡〜横ばい”で推移する一方、価格水準は高止まりのままです。(国土交通省)

要因:なぜ上がったのか(構造要因とイベント要因を分解します)
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  • イベント要因(2021年前後のショック)
    「ウッドショック」による木材価格の急騰。輸入製材の平均単価は2021年に前年比で+100%超の局面を記録し(製材+106%、合板+51%、集成材+114% いずれも12月時点の前年同月比)、木質系下地や合板、フレーミング材を使う内装防音工事に直撃しました。(農林水産省ウェブサイト)
  • 構造要因①(エネルギー・原燃料・物流)
    グラスウールなど繊維系吸音材はエネルギー集約型の製造・輸送コストに依存。2022〜2025年にかけて国内大手の断熱・吸音材が25〜35%級の値上げを段階的に実施しています(例:2023年1月に全製品一律+25%の発表、2025年9月出荷から一部+35%の改定)。(win-x.jp)
  • 構造要因②(石膏ボードの連続改定)
    軽量間仕切りの中核部材である石膏ボードでも+30%の再値上げ告知など、複数回の価格改定が続きました。室内の遮音・質量確保に必須のため、防音室コストに直結します。(日刊木材新聞社 - 木材、建材、住宅、林業などの分野で唯一の日刊専門紙)
  • 構造要因③(労務費・人材確保)
    建設技能労働者の賃金相当として用いられる設計労務単価は2021年比で+22.9%。加えて全国最低賃金の継続的な引上げ(2025年度の全国平均は1,121円、対前年度+66円)も裾野コストを押し上げています。人手不足・高齢化の中で、施工・搬入・搬出・夜間工事など“人が動く工程”の単価が底上げされました。(デジコン)

データ:2020〜2025の指標と部材別インパクト(数値でつかむコスト構造)
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① マクロ指標(建設物価・工事費・需給)
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  • 2021年初対比で資材価格は+約37%(建設物価調査会資料の整理)。同期間に総コストは+25〜29%と試算。(デジコン)
  • 国交省の資材需給・価格動向調査は、2025年の直近局面を“横ばい・均衡・在庫普通”と評価。水準は高止まり。(国土交通省)
  • 建設工事費デフレーター(国交省/E-Stat)は2020→2025で上昇トレンドを継続(最新時系列が毎月更新)。名目コストの実質換算でもコスト上振れが確認できます。(e-Stat)

② 部材・資材の実例(防音室に効くパーツ)
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③ 労務・人件費
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  • 公共工事設計労務単価:2021年比+22.9%。施工・搬入・防音建具の据付・気密処理など、技能を伴う工程のコストが顕著に上昇。(デジコン)
  • 最低賃金:2020→2025で全国平均が段階的に上昇し、2025年度は1,121円。付帯作業・運搬・清掃等の人件費底上げ要因。(厚生労働省)

④ 防音室モデルの“感度分析”(概念)
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典型的な1.5〜2畳ユニット型を例に、原価構成の代表的なイメージ:

  • 材料(55〜60%)=石膏ボード/鋼板・下地/吸音材/遮音ビニール/防音ドア・二重窓/換気消音ダクト
  • 労務(25〜30%)=製造・組立・搬入設置・シール・調整
  • その他(10〜15%)=物流・設計管理・保証・間接費

上記に、材料+37%、労務+23%の上振れを掛けると、総額は+25〜30%程度の押し上げに一致(2021年初対比の概算)。市場ヒアリングの体感値とも大筋整合します。(デジコン)

実勢価格の肌感
・2020年に80〜120万円級だった1.5〜2畳の入門ユニットが、同仕様で100〜150万円級にスライドするケースは珍しくありません(仕様差あり)。
・内装型(現場造作)では、ボード多層貼り・高性能建具採用の設計ほど「材料の質量×労務の手数」が効き、上振れ幅が相対的に大きくなります。
※具体の見積りはメーカー・物件条件で変動します。本節は上記指標に基づく感度試算です。(e-Stat)

今後の展望:2026年に向けた“値上がりと最適化”の両にらみ(投資・調達・設計の実務示唆)
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(1)価格水準:高止まり→緩やかな選別局面
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資材需給は“均衡・横ばい”でも、水準自体は高い

一方で物流や一部エネルギーの落ち着き、需要平準化が進めば“上げピッチ”は鈍化する可能性が高い。材料別には、石膏・繊維系・金属系のうち、エネルギー感応度の高い品目が引き続き強含みやすい。(国土交通省)

(2)労務:構造的な人手不足と単価の底上げ
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技能者の高齢化・若年入職減の流れは続き、単価の切り下げ余地は小さい。省人化・標準化により「手数を減らす」設計が鍵。(国土交通省)

(3)コスト最適化の打ち手(実務で効く順)
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  • 標準化×モジュール化:工場側でプレカット・プレ組み比率を上げ、現場の“手数”を削る(設置時間短縮=労務費・搬入費の削減)。
  • 質量配分の最適化:石膏ボード多層貼りと制振材の最小限設計を両立。低周波は質量、高周波は多孔質吸音で役割分担し、過剰仕様を避ける。
  • 建具の戦略配置:防音ドアは1枚の等級アップが全体の律速点になりやすい。用途に応じて録音側と外部側のゾーニングを見直す。
  • 換気・消音の統合設計:後付けダクトは手戻りが高コスト。初期に消音チャンバー一体の換気系を入れて“穴を開ける回数”を減らす。
  • 調達の分割最適化:石膏・吸音材・建具・ファンをサプライヤー別に見積り、輸送やリードタイムの最短組合せを選ぶ(在庫リスクと価格を同時最適)。
  • スケジュール設計:繁忙月の工期は労務単価が伸びやすい。設置時期のオフピーク化まとめ発注で配送・据付コストを平準化。

(4)価格交渉の指標セット(意思決定の可視化)
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  • 建設工事費デフレーター(月次):名目/実質の乖離を把握し、見積比較の時点補正に使う。(e-Stat)
  • 資材動向(建設物価・国交省調査):主要品目の足元指数で“なぜ上がるのか”を説明可能に。(建設物価情報サイト)
  • 労務単価・最低賃金:エリア別の労務上振れを反映し、遠方工事の追加係数を明確化。(デジコン)

(5)価格シナリオ(編集部見立て)
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  • ベースケース:2025年度は高止まり横ばい、2026年は一部品目で微減も、労務は強含みで総額は横ばい〜微増
  • 上振れリスク:エネルギー価格再騰、円安再加速、輸入材の供給制約(石膏、繊維、金属)。
  • 下振れ要因:建設着工の伸び鈍化による需要緩和、物流コストの低下、規格統一の進展。

まとめ:いま買うなら“仕様を賢く痩せさせる”
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2020〜2025の5年間で、防音室の材料と人件費は構造的に上がった。木材・石膏・吸音材の値上がり、労務単価・最低賃金の上昇が二段圧力となり、総額+25〜30%のレンジで実勢に反映されている。

足元では需給は落ち着きつつも水準は高止まりで、労務の構造的な上振れが続く以上、「価格が元に戻る」ことを前提にした待ち戦略は非合理です。

発注側ができる最適化は、標準化(工場先行)/質量配分の設計最適化/建具と換気の初期統合。価格交渉ではデフレーター・資材指数・労務単価の3点セットで時点差・品目差・地域差を説明し、同等性能で総額を削るのが王道です。

2026年に向けては、“高止まりの中での最適化”が勝ち筋になります。(e-Stat)


参考にした主な公的・一次情報
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