「防音室に入ると、なぜか普段より疲れやすい」「練習後に頭痛がする」
フルート奏者のあなた、こんな経験はありませんか? それは練習のしすぎではなく、「酸欠」 と 「高音の乱反射」 が原因かもしれません。

フルートは呼吸量が非常に多い楽器であり、かつ高音域のエネルギーが強烈です。防音室という閉鎖空間では、これらの特性が牙を剥きます。
この記事では、フルート奏者が健康的に、かつ長時間集中して練習するために必須の 「換気」 と 「吸音」 の正解セッティングを解説します。防音室の性能は、遮音性能(Dr値)だけでなく、「空気」と「響き」で決まります。
フルート練習の隠れた敵は「酸欠」。なぜ防音室で酸欠になるのか#
呼吸量と気密性のミスマッチ#
フルートは、管楽器の中でも特に 「息を捨てながら音を出す」 楽器と言われ、演奏時の呼吸量は非常に多いのが特徴です。
一方で、防音室は「音を逃さない」ために極めて高い気密性で作られています。特に、予算やスペースの都合で選ばれやすい 0.8畳〜1.2畳 のコンパクトな防音室では、酸素の消費に対して空気の入れ替えが追いつかないことが多々あります。
酸欠の初期症状を見逃さないで#
演奏に集中していると気づきにくいですが、以下のような症状が出たら危険信号です。
- こめかみが締め付けられるような頭痛
- 急激な眠気やあくび
- 息苦しさでフレーズが続かない
これらは、室内のCO2濃度が上昇している証拠です。「体調が悪い日が続くな」と思ったら、実は防音室の環境が原因だったというケースは少なくありません。
対策:ロスナイ換気扇と「酸素タイム」#
ロスナイ(熱交換形換気扇)の常時稼働 通常の換気扇ではなく、防音性能を落とさずに換気できる「ロスナイ」等の防音換気扇が必須です。「音が漏れるから」と換気扇を切って練習するのは自殺行為です。絶対にやめましょう。
30分に1回の「酸素タイム」 どんなに高性能な換気扇でも、演奏中の激しい呼吸には勝てないことがあります。「30分吹いたら5分ドアを開ける」 これを鉄の掟(ルール)にしてください。
耳を壊す「高音反射」。狭い防音室での吸音材配置ルール#
フルートの高音は「凶器」になる#
フルートの高音域(2kHz〜)は、直進性が非常に強い音です。
データによると、フルートの音圧レベルは 92〜103dB に達します。狭く、壁が硬い防音室の中でこの高音を吹くと、壁で跳ね返った音が減衰せずに直接耳に飛び込んできます。
これが続くと、耳鳴りや難聴のリスクが高まります。「自分の音がうるさくて耳が痛い」と感じるなら、それは部屋の響きが間違っています。
吸音材の正解配置:耳の高さを守れ#
では、どうすればよいのでしょうか? 全面の壁にスポンジを貼ると、今度は音が響かなくなり(デッドになりすぎ)、無理に吹いて調子を崩してしまいます。
正解は、「耳の高さ」に帯状に吸音材を貼る ことです。
対面する壁の法則 向かい合う壁の両方に吸音材を貼る必要はありません。音が反射するのは「壁から壁へ」の往復です。「右側の壁には貼るが、左側は空ける(またはその逆)」 というように、対面する壁の片側だけを吸音することで、適度な響きを残しつつ、耳に刺さるフラッターエコー(定在波)を消すことができます。
材質の選び方 薄いフェルトではなく、厚さ25mm以上のウレタン吸音材や、グラスウール製の吸音パネルを選びましょう。高音域を確実に吸い取ってくれます。
防音室の推奨サイズとレイアウト事例#
0.8畳は「可能」だが「非推奨」#
メーカーのカタログでは、フルートは「0.8畳〜」と書かれていることが多いですが、私は 1.2畳以上 を強く推奨します。
- 0.8畳: 楽器を構えることはできますが、壁が近すぎて高音の反響がキツく、酸欠リスクも最大です。
- 1.2畳〜: 譜面台と少し距離が取れ、空気の容積も増えるため、快適性が段違いです。
ベストなレイアウト#
防音室内の配置も重要です。
- 換気扇の位置: 演奏者の背後や足元など、風が直接体に当たらない位置に来るように立ち位置を調整します。
- 譜面台と壁: 譜面台の奥に少しスペースを空け、そこに吸音パネルを置くと、自分の音がクリアに聞こえやすくなります。
まとめ#
フルートの防音室選びは、単に「外に音が漏れないか」だけでなく、「中で安全に吹けるか」が重要です。
- 酸欠対策: ロスナイ換気扇の常時稼働と、30分に1回のドア開放。
- 反響対策: 耳の高さに吸音材を配置し、高音の乱反射を防ぐ。
- 広さ: 健康を守るために、できれば1.2畳以上を選ぶ。
これらを意識するだけで、練習後の疲労感は劇的に変わります。まずは今すぐ、換気扇のフィルター掃除と、吸音スポンジの設置から始めてみてください。あなたの耳と体は、楽器と同じくらい大切な資産です。
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