自社スタジオの構築、テレワーク・オンライン商談用の個室ブース、あるいは従業員の福利厚生として「防音室」を導入する法人が増えています。 経営者や経理担当者にとって最大の関心事は、「数百万円の防音室導入費用を、いかに早く経費化(損金算入)して節税に繋げるか」 でしょう。
結論から言えば、防音室は事業用であれば間違いなく経費になります。しかし、「ユニット型(組み立て式)」を選ぶか「造作(部屋の改修工事)」を選ぶかで、キャッシュフローに数十年の差が生まれる ことは意外と知られていません。
本記事では、経営者が導入前に絶対に知っておくべき「防音室の税務上の扱い(減価償却と固定資産税)」について解説します。
1. 運命の分かれ道:耐用年数「15年」か「47年」か#
防音室は高額な固定資産となるため、購入した年に全額を経費で落とすこと(即時償却)は原則としてできません(※中小企業者等の少額減価償却資産の特例を除く)。 税法上の「法定耐用年数」に従って、複数年に分割して経費化(減価償却)していきます。ここで最も重要なのが、防音室の「種類」による分類の違いです。
① ユニット型(組み立て式)防音室の場合#
ヤマハのアビテックスやカワイのナサール、各種オフィスコムブースのような「解体・移設が可能なユニット型」は、建物の一部ではなく 「器具及び備品(可動間仕切り)」 として扱われます。
- 法定耐用年数: 15年
- メリット: 比較的短い期間で経費化(損金算入)が進むため、早期の利益圧縮効果(節税効果)が見込めます。
② 造作(部屋全体のリフォーム)防音室の場合#
既存の部屋の壁や床に遮音材を組み込み、建物と一体化させる本格的な防音工事を行った場合、その費用は 「建物附属設備」または「建物そのもの」 の取得価額に加算される可能性が高くなります。
- 法定耐用年数: 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物であれば、最長で 47年(用途により変動)
- デメリット: 経費化のスピードが極めて遅く、投下資金の回収(税負担の軽減効果)に膨大な時間がかかります。
【経営判断】 キャッシュフローと早期の利益圧縮を優先するなら、音響性能に問題がない限り、間違いなく「ユニット型」を選択すべきです。
2. 隠れたコスト「固定資産税(償却資産税)」の罠#
減価償却と並んで注意すべきなのが、防音室にかかる 固定資産税(償却資産税) です。
ユニット型は「償却資産税」の対象#
ユニット型の防音室は「償却資産」に該当します。 法人が所有する償却資産の評価額の合計が 免税点(150万円) を超える場合、超過分に対して毎年 1.4% の償却資産税が課税されます。 ハイスペックな防音ブースを複数台導入した場合、この税金が毎年発生することをランニングコストとして事業計画に組み込んでおく必要があります。
造作工事は「建物の固定資産税」が上がる#
一方、建物を改修して防音室を作った場合、償却資産税の対象にはなりませんが、家屋の評価額が上がるため、結果として 建物の固定資産税 が増税される可能性があります。
3. 税効果を最大化する裏技:「中古」のユニット型防音室#
「もっと早く全額を経費化したい!」という経営者にとって、最強のソリューションが 「中古のユニット型防音室」 を購入することです。
中古資産には、耐用年数を短く計算できる特例(簡便法)が用意されています。 例えば、法定耐用年数(15年)をすべて経過した中古の防音室を購入した場合:
法定耐用年数15年 × 20% = 3年
つまり、たった3年で全額を減価償却(経費化)することが可能 になります。短期での大きな利益圧縮を狙う場合、新品よりも15年落ちのアビテックスを探す方が、財務戦略としては大正解となるケースが多々あります。
まとめ:経営者のための防音室導入ガイドライン#
- 防音室は事業目的であれば経費(損金)算入が可能。
- 財務面(キャッシュフロー)を重視するなら、耐用年数が長い「造作」よりも、15年で償却できる「ユニット型」 を選ぶ。
- 導入時は、初期費用だけでなく毎年の「償却資産税(1.4%)」の支払いも考慮に入れる。
- 超短期での経費化を狙うなら、「中古ユニット」 の導入も検討する。
高額な防音室の導入は、オフィス環境やサービスの質を劇的に向上させる素晴らしい投資です。導入計画を立てる際は、設置業者だけでなく、必ず顧問税理士と「耐用年数の扱い」について事前協議を行うことを強く推奨します。

