「そんなに大きな音を出していないはずなのに、階下の人から『重低音が響く』と苦情がきた」
チェロ奏者が直面するこのトラブル。実は、原因は「空気の音」ではありません。 犯人は、あなたが床に刺している 「エンドピン」 です。

今回は、Dr値の高い防音室を買っても防げない、チェロ特有の「固体伝搬音(振動)」を断つ対策を解説します。
チェロのエンドピンは「振動の槍」。固体音の恐怖#
物理的に床を揺らしている#
チェロという楽器は、巨大な木の箱(ボディ)全体で弦の振動を増幅させます。その振動の逃げ道となっているのが、床に一点集中で突き刺さる「エンドピン」です。
エンドピンは、いわば 「床を直接揺らすための杭」 のようなものです。
- 弦の振動がエンドピンへ伝わる。
- エンドピンから床(建物のコンクリート)へ「振動」として直接注入される。
- コンクリートを伝って階下の天井を揺らす。
- 階下の部屋全体がスピーカーになり、「ブーン」「ゴゴゴ」という不快な重低音を放射する。
これが 固体伝搬音 です。空気を伝わる音ではないので、空気の音を遮断する「二重窓」や「厚い壁」も、この振動の前では無力です。
階下を守る「防振ステージ」とストッパーの選び方#
では、どうすればよいのでしょうか? 答えはシンプルです。 「エンドピンを床から浮かせる」 ことです。
Level 1: 簡易対策(専用ストッパー)#
まず、床に直刺しするのは論外です。フローリングを傷つけるだけでなく、振動を100%伝えてしまいます。 市販のエンドピンストッパーを使う場合も、100均の薄いゴムでは意味がありません。
- ブラックホール(Black Hole) : 定番の強力防振ストッパー。
- 厚手の防振ゴム : ホームセンターで売っている「洗濯機用」の防振ゴムパッドなどを流用するのも効果的です。
Level 2: 最強のDIY「防振ステージ」#
さらに完璧を目指すなら、 「防振ステージ(浮き床)」 を自作しましょう。
材料 :
- ジョイントマット(厚手)
- コンパネ(合板)
- 防振ゴム(または「ディスクふにゃふにゃシステム」用のバランスディスク)
構造 : 床の上に防振ゴムを置き、その上にコンパネを敷き、フェルトカーペットを貼ります。 この「浮いた板」の上で、椅子に座り、エンドピンを刺します。
これにより、エンドピンの一点にかかる荷重を面で分散し、さらにゴムの層で振動を熱エネルギーに変換して遮断します。 ここまでやれば、階下への被害は劇的に減ります。
弓のスペースも忘れずに。防音室サイズのアドバイス#
振動対策ができたら、次は防音室のサイズです。
チェロは座って弾くので「天井は低くていい」と思われがち。 ……ですが、アップボウで弓を大きく振り上げた時、天井が低いと 弓先が当たります。 また、横幅も意外と必要です。
- 広さ : 最低でも 1.5畳 。できれば 2.0畳 。
- 高さ : 標準タイプでもギリギリいけますが、背の高い方はHighタイプを検討してください。
まとめ:チェロの防音対策は「振動」との戦い#
チェロの防音対策は、「音」よりも「振動」との戦いです。
- 直刺し厳禁 : エンドピンは振動の発生源。
- 浮かす : 防振ステージ(浮き床)を作り、物理的に床と縁を切る。
- 確認 : 対策後に、家族に階下(または別の部屋)で音を聞いてもらう。
演奏技術を磨くのと同じくらい、この「防振マナー」を徹底してください。それが、長く安心してチェロを弾き続けるためのパスポートです。
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