音楽活動をしている方なら一度は悩んだことがあるはず、「賃貸で楽器を演奏したいけど、音が漏れないか心配…」という問題。
そんな悩みを解決してくれるのが「防音賃貸」です。でも、普通の「楽器可物件」とは何が違うの?実際どれくらい音が漏れないの?家賃はどのくらい高いの?
この記事では、防音賃貸について知っておきたいことを全部まとめました。
防音賃貸って何?普通の楽器可物件との決定的な違い#
防音賃貸の定義#
防音賃貸とは、専用の防音室が備え付けられた賃貸物件のことです。
一般的な賃貸マンションに後付けで防音室を設置するのではなく、建物の設計段階から防音性能を考慮して作られているのが特徴。つまり、「防音」が標準装備されている物件なんです。
「楽器可」物件との3つの大きな違い#
多くの人が混同しがちなのが、「楽器可物件」と「防音賃貸」の違いです。実はこの2つ、全然別物なんです。
1. 防音性能が圧倒的に違う
- 楽器可物件: 防音性能D-40~50程度(一般的なマンションと同程度)
- 防音賃貸: 防音性能D-50~80(専用防音室付き)
この数字、何を意味するかというと、D値が10上がるごとに体感的な音量が約半分になるイメージです。つまり、D-60の防音賃貸なら、D-40の楽器可物件に比べて音漏れが4分の1程度になる計算です。
2. 演奏できる時間帯が全然違う
- 楽器可物件: 基本的に9時~20時など時間制限あり、夜間・早朝は厳禁
- 防音賃貸: 24時間演奏OK(物件による)
これ、音楽やってる人にとっては超重要ですよね。仕事終わりの夜にしか練習時間が取れない人や、配信活動をしている人には、24時間使える環境は本当にありがたいです。
3. 近隣トラブルのリスクが段違い
楽器可物件でも、実際には隣人から苦情が来るケースは少なくありません。「楽器可」という表記は「演奏を許可する」というだけで、「音が漏れない」とは別の話なんです。
一方、防音賃貸は専用の防音室があるので、正しく使えば近隣トラブルのリスクはかなり低くなります。
防音賃貸の種類と性能#
性能別の3つのグレード#
防音賃貸にもグレードがあって、大きく3つに分けられます。
プレミアムグレード(D-70~80)
- 家賃目安: 20~30万円(東京都心)
- 対応楽器: ドラム、グランドピアノなど大音量楽器もOK
- ターゲット: プロ音楽家、本格的な配信者
スタンダードグレード(D-60~65)
- 家賃目安: 15~20万円
- 対応楽器: アップライトピアノ、管楽器、弦楽器
- ターゲット: 一般的な音楽愛好家、音大生
ベーシックグレード(D-50~55)
- 家賃目安: 12~16万円
- 対応楽器: 軽めの弦楽器、声楽、DTM・配信
- ターゲット: 学生、初心者、配信者
楽器別に必要な防音性能の目安#
自分が演奏する楽器によって、必要な防音性能が変わってきます。
楽器の種類 | 推奨D値 | 特記事項 |
---|---|---|
ドラム | D-65~70 | 低音・振動対策が超重要 |
グランドピアノ | D-60以上 | 天井高3m、床荷重にも注意 |
アップライトピアノ | D-50~55 | 比較的一般的な防音室でOK |
管楽器 | D-50~55 | 音の指向性を考慮した配置が必要 |
弦楽器 | D-50以上 | 音響バランスも重視 |
声楽 | D-40~50 | 一般的な防音室で対応可 |
DTM・配信 | D-45以上 | 電源・通信環境も要確認 |
ドラムをやりたい人は、振動対策がされているかも必ずチェックしてください。防音性能が高くても、振動は別問題なので。
全国の防音賃貸物件データ#
地域別の物件数と特徴#
2025年時点で、全国に約287件の防音賃貸物件があります。でも、地域によってかなり偏りがあるんです。
関東エリア(226件・78.7%)
- 東京が圧倒的に多く、特に音楽大学周辺に集中
- 平均家賃: 18~25万円
- 特徴: 選択肢は多いが競争も激しい、待機者6,000人以上
関西エリア(26件・9.1%)
- 大阪中心に展開、京都・神戸にも少数あり
- 平均家賃: 14~18万円(関東より20~30%安い)
- 特徴: 関東に比べて穴場、これから増える可能性あり
九州・沖縄エリア(20件・7.0%)
- 福岡市に集中
- 平均家賃: 11~15万円(関東より40~50%安い)
- 特徴: 地方都市の中では選択肢多め、コスパ良好
東京以外に住んでる人は、選択肢が限られるのが現実です。ただ、その分家賃は安いので、地方在住の方にはメリットもあります。
音楽大学周辺は激戦区#
特に注目なのが、**東京音楽大学周辺(中目黒・代官山エリア)**です。
- 徒歩圏内に約15件の防音賃貸が集中
- 平均家賃: 22万円(全国最高水準)
- 入居待ち: 6~12ヶ月も珍しくない
- 入居者の60%が音大生
音大に通うなら理想的な環境ですが、その分競争も激しいです。早めの物件探しが必須ですね。
防音賃貸の家賃相場と初期費用#
一般賃貸と比べてどれくらい高い?#
正直に言います。防音賃貸は高いです。でも、その理由を知れば納得できるはず。
エリア | 一般賃貸 | 防音賃貸 | 差額 | プレミアム率 |
---|---|---|---|---|
東京都心 | 15万円 | 22万円 | +7万円 | 47% |
東京近郊 | 12万円 | 16万円 | +4万円 | 33% |
大阪市内 | 10万円 | 14万円 | +4万円 | 40% |
福岡市内 | 8万円 | 11万円 | +3万円 | 38% |
平均すると、一般賃貸より30~50%ほど高いという感じです。
なぜこんなに高いの?#
家賃が高い理由は主に4つあります。
- 建設費が1.5~2倍かかる(防音構造のため)
- 特殊な設備費(防音ドア、二重窓、防振床など)
- 希少性(供給が少なく需要が多い)
- メンテナンス費(特殊設備の維持管理)
つまり、大家さんも最初から高額投資してるので、家賃が高くなるのは仕方ないんですよね。
初期費用の比較:防音賃貸 vs 一般賃貸+防音室#
「高い家賃払うくらいなら、安い普通の賃貸借りて防音室を買った方がいいんじゃない?」
そう思う人もいるでしょう。実際、どっちが得なのか計算してみました。
項目 | 防音賃貸 | 一般賃貸+防音室 |
---|---|---|
敷金・礼金 | 月額2~3ヶ月分 | 月額1~2ヶ月分 |
防音室購入費 | なし | 80~400万円 |
設置工事費 | なし | 50~100万円 |
初年度総額 | 200~300万円 | 350~600万円 |
初期費用は防音賃貸の方が圧倒的に安いです。
居住年数別のおすすめ
- 1~5年: 防音賃貸が断然お得(総コスト150万円安い)
- 6~7年: ほぼ同じ
- 8年以上: 一般賃貸+防音室の方が経済的
つまり、長く住む予定がないなら防音賃貸一択です。
防音賃貸の選び方・チェックポイント#
内見で絶対確認すべき5つのこと#
物件選びで失敗しないために、内見では必ずこれらをチェックしてください。
1. 実際の防音性能を体感する
カタログスペックだけじゃなくて、実際に音を出させてもらいましょう。できれば自分の楽器を持ち込んで試奏するのがベスト。
外から音がどう聞こえるか、家族や友人に確認してもらうのも重要です。
2. 防音室のサイズと使い勝手
- 防音室の広さは十分か(1.5畳、2畳など)
- 楽器を置いて演奏できるスペースがあるか
- 譜面台や機材も置けるか
- 天井高は十分か(特にピアノの場合)
カタログの「2畳」って、実際に見るとかなり狭く感じることもあります。必ず現物確認を。
3. 換気・空調設備
防音室は密閉性が高いので、換気がめちゃくちゃ重要です。
- 専用換気扇はあるか
- エアコンは付いているか(防音室専用が理想)
- 夏場の暑さ対策は大丈夫か
- 湿度管理はできるか(楽器保護のため)
実際、換気不足で夏場に熱中症寸前になったという話も聞きます。要注意ポイントです。
4. 搬入経路と床荷重
特に大型楽器を使う人は必須チェック。
- グランドピアノが入る搬入経路があるか
- エレベーターのサイズは十分か
- 階段の幅や踊り場は大丈夫か
- 床の耐荷重は十分か(グランドピアノは400kg以上)
せっかく契約したのに楽器が入らないとか、最悪すぎますからね。
5. 契約条件と使用ルール
- 演奏可能な時間帯(24時間OKか、制限があるか)
- 演奏できる楽器の種類
- 音量制限はあるか
- 退去時の原状回復範囲
- 契約期間と更新条件
特に「24時間演奏可能」と書いてあっても、実際には「非常識な時間帯は避けて」みたいな暗黙のルールがあることも。しっかり確認しましょう。
立地選びのコツ#
音楽系学生の場合
学校までの距離が最重要です。大型楽器を毎日運ぶことを考えると、徒歩15分以内が理想。
時間価値も考慮すると、実は徒歩10~15分の「中距離」物件が最もコスパが良いというデータもあります。駅近すぎると家賃が跳ね上がるので。
社会人の場合
職場へのアクセスとのバランスですね。テレワーク中心なら、多少都心から離れても地方の物件を選ぶのもアリ。家賃も安くなりますし。
主な防音賃貸運営会社#
リブラン(業界最大手)#
- 物件数: 37棟・約900戸
- 待機者: 6,000人以上
- 歴史: 35年の実績
- 特徴: 業界No.1の認知度と信頼性、立地の良さ
- 弱み: 競争率が非常に高い
ミュージション#
- 物件数: 中堅規模
- 特徴: 木造でD-80を実現する独自技術
- 強み: 音楽特化型、専門性の高さ
- 弱み: 物件数が限定的
その他の運営会社#
ソナーレ、東京建物など、複数の運営会社があります。それぞれ特色があるので、複数社を比較検討するのがおすすめです。
防音賃貸のメリット・デメリット#
メリット#
1. 時間を気にせず演奏できる
これが最大のメリット。仕事や学校の後、深夜でも早朝でも、好きな時に練習できるって最高じゃないですか。
2. 近隣トラブルの心配がほぼない
楽器可物件だと「音が気になる」という苦情が来ることもありますが、防音賃貸ならその心配はほぼゼロ。精神的にめちゃくちゃラクです。
3. 初期費用が安い
自分で防音室を買うより、圧倒的に初期費用を抑えられます。特に5年以内の居住なら経済的メリット大。
4. プロ仕様の環境
本格的な防音・音響環境で練習できるので、上達も早いかも。レコーディングや配信活動にも最適です。
デメリット#
1. 家賃が高い
これは避けられません。一般賃貸より月3~7万円高いです。
2. 物件の選択肢が少ない
特に地方だと、ほとんど選択肢がないことも。東京でさえ287件しかなく、常に満室状態です。
3. 立地が限られる
都心の好立地にあることは少なく、音楽大学周辺など特定エリアに集中しています。
4. 防音室が狭い
多くの防音賃貸の防音室は1.5~2畳程度。大型楽器や機材が多い人には手狭かもしれません。
入居までの流れと注意点#
1. 物件探し(余裕を持って)#
人気物件は入居待ち6ヶ月~1年も珍しくありません。特に音大周辺は激戦区。
引っ越し予定の半年~1年前から探し始めるのが理想です。
2. 内見予約#
防音賃貸は一般の賃貸サイトにあまり載っていないので、専門の運営会社に直接問い合わせましょう。
3. 入居審査#
一般的な賃貸より審査が厳しめです。
- 収入証明(家賃の3倍以上の月収が目安)
- 職業・勤務先情報
- 連帯保証人(または保証会社利用)
- 音楽活動の内容確認
音大生の場合、親御さんの収入証明が必要になることがほとんど。
4. 契約・初期費用の支払い#
- 敷金: 2~3ヶ月分
- 礼金: 1~2ヶ月分
- 仲介手数料: 1ヶ月分
- 前家賃: 1ヶ月分
- 火災保険など
合計で家賃の5~7ヶ月分を初期費用として見込んでおきましょう。
5. 入居・利用開始#
入居後も、運営会社からの使用ルールをしっかり守ることが大切です。他の入居者もいるので、マナーは守りましょう。
よくある質問#
Q1: 本当に24時間演奏できるの?
物件によります。多くの防音賃貸は24時間OKですが、契約前に必ず確認を。また、「非常識な時間は避ける」という暗黙のマナーもあります。
Q2: 友人とバンド練習できる?
これも物件次第。複数人での利用がOKか、事前確認が必須です。人数制限がある場合も。
Q3: 配信活動に使える?
はい、むしろ配信者向けの需要が増えています。電源やネット環境も確認しておきましょう。
Q4: ペットも飼える?
防音性能とペット可は別問題です。ペット可物件かどうか別途確認が必要。
Q5: 途中で退去したい場合は?
一般的な賃貸と同じく、契約内容によります。2年契約が多いですが、中途解約の条件を確認しておきましょう。
まとめ:防音賃貸はこんな人におすすめ#
防音賃貸が向いている人はこんな感じです。
✅ 音大生や音楽の専門学校生 ✅ 楽器演奏を本格的に学びたい人 ✅ 配信活動をしている・始めたい人 ✅ プロの音楽家、音楽講師 ✅ 5年以内の居住を考えている人 ✅ 時間を気にせず演奏したい人
逆に、こんな人は一般賃貸+防音室の購入も検討してみてください。
❌ 8年以上同じ場所に住む予定 ❌ できるだけ家賃を抑えたい ❌ もっと広い防音空間が欲しい ❌ 自分好みにカスタマイズしたい
防音賃貸は確かに家賃は高いけど、「時間を気にせず演奏できる」という価値はお金に代えられません。
音楽活動を本気でやりたいなら、環境への投資は必要経費。あなたの音楽ライフが、理想の環境で充実したものになることを願っています!
物件探しは早めに動くのがコツ。気になったら、まずは問い合わせてみましょう。