防音室を検討しているけど、メーカーがいろいろあって選べない…そんな方に向けて、主要メーカーの特徴と違いをまとめました。
各社それぞれに強みがあるので、自分の用途や予算に合ったものを見つけましょう。
防音室の主要メーカー3社を比較#
日本の防音室市場で高いシェアを持つのが、ヤマハ、カワイ、大和ハウスの3社です。それぞれ特色があるので、まずは基本情報から見ていきましょう。
ヤマハ(アビテックス)#
市場シェア:約50%(国内No.1)
ヤマハは防音室市場で圧倒的なシェアを誇るメーカーです。1967年から防音室事業をスタートさせた老舗で、50年以上の実績があります。
強み
- 業界最大手の信頼性とブランド力
- 豊富な製品ラインナップ
- 全国的な販売・サポート網
- 楽器メーカーならではの音響知見
弱み
- 価格が比較的高め
- 納期が長くなることも
こんな人におすすめ
- 安心できる大手ブランドを選びたい
- 長く使う前提でしっかりしたものが欲しい
- 全国どこでもサポートを受けられる体制が良い
カワイ(ナサール)#
市場シェア:約30%
カワイはヤマハに次ぐ第2位のシェアを持つメーカーです。同じく楽器メーカーとしての知見を活かした防音室を展開しています。
強み
- ヤマハより価格が安い(約10万円程度)
- コストパフォーマンスが高い
- 楽器店ネットワークでの販売網
- 独自の防音技術
弱み
- ヤマハほど知名度が高くない
- 製品ラインナップがやや少なめ
こんな人におすすめ
- コスパ重視で選びたい
- ヤマハと同等品質を少し安く買いたい
- カワイのピアノを使っている
大和ハウス(音の自由区)#
市場シェア:約5%
大和ハウスは住宅メーカーとして防音室を展開。1973年から研究を続けており、住宅一体型の防音室に強みがあります。
強み
- 住宅建築時の一体設計
- 注文住宅との親和性が高い
- ハウスメーカーの施工品質
- 住宅全体の設計に組み込める
弱み
- 後付け設置には不向き
- 価格が高め
- 新築・リフォーム時のみ選択肢
こんな人におすすめ
- 新築やリフォームを計画中
- 家全体の設計に組み込みたい
- 大和ハウスで家を建てる予定
製品スペック比較表#
各メーカーの代表的な製品を一覧で比較できるようにまとめました。
エントリーモデル(1.5畳クラス)#
メーカー | 製品名 | サイズ | 遮音性能 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
ヤマハ | セフィーネNS 1.5畳 | 1.5畳 | Dr-40 | 110万円〜 | スタンダードな人気モデル |
カワイ | ナサール 1.5畳 | 1.5畳 | Dr-40 | 98万円〜 | コスパ最強。ヤマハより約10万円安い |
大和ハウス | 音の自由区 | カスタム | 70dBA | 住宅組込 | 新築時限定。住宅と一体化 |
スタンダードモデル(2〜2.5畳クラス)#
メーカー | 製品名 | サイズ | 遮音性能 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
ヤマハ | セフィーネNS 2畳 | 2畳 | Dr-40 | 130万円〜 | ピアノ演奏に最適 |
ヤマハ | セフィーネNS 2.5畳 | 2.5畳 | Dr-40 | 180万円〜 | 管楽器・声楽向け広めサイズ |
カワイ | ナサール 2畳 | 2畳 | Dr-40 | 120万円〜 | 広めの空間でコスパ良好 |
プレミアムモデル#
メーカー | 製品名 | サイズ | 遮音性能 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
ヤマハ | アビテックス AFE | カスタム | Dr-40〜50 | 200〜350万円 | カスタム対応。特殊用途向け |
ヤマハ | アビテックス大型 | 3畳以上 | D-50〜60 | 300〜500万円 | グランドピアノ対応 |
大和ハウス | 音の自由区+ | カスタム | 70dBA | 応相談 | 住宅設計段階で組み込み |
エントリー簡易型#
メーカー | 製品名 | サイズ | 遮音性能 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
ヤマハ | だんぼっち | 0.8畳程度 | 簡易 | 6〜15万円 | 配信・通話用の超小型ブース |
東京防音 | Okudake DESK | デスク型 | D-30程度 | 12万円 | デスクと一体化。テレワーク向け |
遮音性能の違いを理解しよう#
防音室を選ぶとき、一番重要なのが「遮音性能」です。これを理解しないと、買った後に「思ったより音が漏れる…」なんてことに。
Dr値とD値の違い#
- Dr値:ユニット型防音室の性能表示(日本独自規格)
- D値:建築物の遮音性能表示(JIS規格)
ざっくり言うと、Dr-40 ≒ D-45〜50程度と考えてOKです。
性能別の用途目安#
性能 | 外への音漏れ | 適した用途 |
---|---|---|
Dr-30〜35 | 小さく聞こえる | 歌声、アコースティックギター、配信 |
Dr-40 | かすかに聞こえる | ピアノ、管楽器、弦楽器 |
Dr-45〜50 | ほとんど聞こえない | 金管楽器、大音量演奏 |
D-60以上 | 完全に遮断 | ドラム、バンド練習、録音スタジオ |
マンションで使う場合は最低でもDr-40以上、ドラムならD-60以上が必須です。
価格帯別の選び方#
予算に応じて、どんな選択肢があるかまとめました。
〜50万円:簡易型・エントリー#
選択肢
- だんぼっち(6〜15万円)
- Okudake DESK(12万円)
- 海外製簡易ブース(8〜30万円)
向いている用途
- 配信・通話
- テレワーク
- 軽い楽器練習
本格的な楽器演奏には不向きですが、配信やテレワークならこの価格帯で十分です。
50〜150万円:スタンダード#
選択肢
- カワイ ナサール 1.5畳(98万円〜)
- ヤマハ セフィーネNS 1.5畳(110万円〜)
- ヤマハ セフィーネNS 2畳(130万円〜)
向いている用途
- ピアノ練習
- 弦楽器
- 管楽器(小型)
- ボーカル練習
このゾーンが一番売れ筋です。コスパで選ぶならカワイ、安心感ならヤマハですね。
150〜300万円:プレミアム#
選択肢
- ヤマハ セフィーネNS 2.5畳(180万円〜)
- ヤマハ アビテックス AFE(200〜350万円)
向いている用途
- 管楽器(大型)
- 本格的な声楽練習
- 音楽教室
- 複数人での演奏
広めの空間が必要な用途向けです。音楽教室を開きたい人にもおすすめ。
300万円以上:プロ仕様#
選択肢
- アビテックス大型(300〜500万円)
- 現場施工型(400〜2,000万円)
向いている用途
- グランドピアノ
- ドラム
- 録音スタジオ
- 放送局
プロや本格的な用途向け。ドラムやグランドピアノを置くならこのクラスが必要です。
楽器別のおすすめメーカー#
自分が演奏する楽器に合わせて選ぶのも重要です。
ピアノ#
アップライトピアノ
- おすすめ:カワイ ナサール 2畳(120万円〜)
- 理由:コスパ良好でピアノに特化した設計
グランドピアノ
- おすすめ:ヤマハ アビテックス大型(300万円〜)
- 理由:天井高・床荷重に対応した設計
管楽器#
フルート・クラリネット
- おすすめ:ヤマハ セフィーネNS 1.5畳(110万円〜)
- 理由:コンパクトで十分な遮音性能
トランペット・サックス
- おすすめ:ヤマハ セフィーネNS 2.5畳(180万円〜)
- 理由:大音量に対応した広めの空間
弦楽器#
バイオリン・チェロ
- おすすめ:カワイ ナサール 1.5畳(98万円〜)
- 理由:音響バランスが良くコスパ優秀
ドラム#
おすすめ:現場施工型(400〜800万円)
- 理由:ユニット型では対応困難。振動・低周波対策が必須
ドラムの場合、ユニット型防音室では厳しいです。専門業者による現場施工をおすすめします。
配信・録音#
YouTuber・VTuber
- おすすめ:だんぼっち(6〜15万円)
- 理由:コンパクトで十分な防音性。コスパ最強
音楽制作・DTM
- おすすめ:ヤマハ セフィーネNS 1.5畳(110万円〜)
- 理由:静寂性と音響バランスが重要
購入前にチェックすべきポイント#
スペック表だけじゃ分からない、実際に買う前に確認すべきことをまとめました。
設置スペースの確認#
防音室の「外寸」が実際に必要なスペースです。カタログの「室内寸法」より大きいので注意。
例:2畳防音室の場合
- 室内:約2畳
- 外寸:約3〜4畳分
- さらに周囲10〜20cm必要
設置予定の部屋で、外寸がちゃんと収まるか必ず確認しましょう。
搬入経路の確認#
意外と盲点なのが搬入経路です。
チェック項目
- 玄関ドアの幅
- 廊下の幅
- エレベーターのサイズ
- 階段の幅(2階以上の場合)
- 曲がり角の広さ
大型の防音室は解体搬入になることも。事前に業者と確認が必須です。
床の耐荷重#
防音室はかなり重いです。
重量の目安
- 1.5畳:約500〜700kg
- 2畳:約700〜1,000kg
- 3畳以上:1,000kg以上
木造2階や古いマンションの場合、補強工事が必要になることもあります。
換気・空調設備#
防音室は密閉空間なので、換気が超重要です。
必須の設備
- 換気扇(防音室専用)
- エアコン(または外部エアコンとのダクト接続)
- 温湿度計
夏場は40℃超えることもあるので、空調なしはマジで危険です。
賃貸の場合#
賃貸物件に設置する場合は、必ず大家さん・管理会社の許可を取りましょう。
確認すべきこと
- 設置の可否
- 原状回復の範囲
- 撤去費用の負担
- 床の保護方法
無断設置は契約違反になるので注意です。
メーカー直営vs販売店での購入#
防音室を買う方法は大きく2つあります。
メーカー直営(公式サイト・ショールーム)#
メリット
- 最新の製品情報
- 専門スタッフの対応
- メーカー保証が確実
- ショールームで実物確認
デメリット
- 値引きが少ない
- 複数メーカー比較が面倒
販売店(楽器店・工務店など)#
メリット
- 値引き交渉の余地
- 複数メーカー比較が簡単
- 地域密着のサポート
- 施工業者の紹介も
デメリット
- 専門知識にばらつき
- 在庫がない場合も
個人的には、最初はショールームで実物を見て、購入は販売店で値引き交渉がおすすめです。
中古・レンタルという選択肢#
新品だけじゃなく、中古やレンタルも選択肢としてアリです。
中古防音室#
価格の目安
- 新品の40〜70%程度
- 使用状況・年数で変動
メリット
- 初期費用を大幅に抑えられる
- すぐに使える場合も
デメリット
- 性能保証が限定的
- 解体・再組立で損傷リスク
- 新居での設置条件要確認
ヤフオクやメルカリでも出品されてますが、搬入・設置費用が別途かかるので注意です。
レンタル#
価格の目安
- 月額2〜5万円程度
- 最低契約期間あり
向いているケース
- 短期間だけ使いたい
- まず試してから購入検討
- 初期費用を抑えたい
向いていないケース
- 5年以上使う予定
- カスタマイズしたい
長期で使うなら買った方がお得です。損益分岐点は大体2〜3年くらいですね。
まとめ:自分に合った防音室を選ぼう#
最後に、メーカー選びのポイントをまとめます。
ブランド重視・安心感重視なら → ヤマハ
- 業界No.1の信頼性
- 充実したサポート体制
- 豊富な製品ラインナップ
コスパ重視・予算を抑えたいなら → カワイ
- ヤマハより約10万円安い
- 性能はほぼ同等
- 楽器店での購入がお得
新築・リフォームを計画中なら → 大和ハウス
- 住宅設計と一体化
- 後付けより自然な仕上がり
- ハウスメーカーの施工品質
配信・テレワーク用の手軽さ重視なら → だんぼっち
- 超低価格(6〜15万円)
- コンパクトで設置簡単
- 配信者に大人気
防音室は高い買い物なので、ショールームで実物を見て、じっくり検討するのがおすすめです。各メーカーのショールームは予約制が多いので、事前に連絡してから行きましょう。
理想の防音環境を手に入れて、思いっきり音楽や配信を楽しんでください!